学生に薦める本 2003年版

澤口 晋一

『市民科学者として生きる』

高木仁三郎 岩波新書 1999年

『市民の科学をめざして』

高木仁三郎 朝日新聞社 1999年

『市民科学ブックス 人間の顔をした科学』

高木仁三郎 七つ森書館 2001年

『プルトニウムの未来―2041年からのメッセージ―』

高木仁三郎 岩波書店 1994年
 あなたたちには,わが国が世界有数の「核=プルトニウム」保有国だといういうことを知っていますか?何故そうなのか知っていますか?そして,わが国は将来この核をめぐって実に多くの深刻な問題に直面することになるであろうことを認識していますか?世界最大の原発を抱える新潟県に生まれ育ったあなたたちがこうした問題に無知であることは決して許されることではありません.
 高木仁三郎氏は昨年この世を去りましたが,日本の反原発・脱原発運動の理論的・精神的そして実践的支柱であった人です.わたしはここ数年この人の著作を集中的に読んでいますが,そこで身の震えるような思いを何度となく経験しました.ここではその中から特にみなさんにも読んでもらいたい4冊を選びました.わたしは,これまで人とか社会とかいったものとは多少距離をおいて自分の専門分野のことを勉強してきました.しかし,そうしたこれまでの自分の世の中に対する姿勢と価値観が,この高木氏の著作に接して根底から崩れ去っていくのを感じました.わたしは…
 新潟に住まうあなたたちに是非読んでもらいたい書です.
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『旧石器遺跡捏造』

河合信和 文芸春秋 2003年
 旧石器遺跡捏造事件."50万年前日本に原人","30kmの距離を隔てて旧石器が接合"といった大発見が,ひとりのアマチュア考古学者によってつぎつぎとなされた.考古学に多少の興味と関心のある私にとっても,これら一連の発見に対しては単純に喝采を送ったり,逆に,しかしなあ…と考えこんだり,そういうものだった.ついこのあいだのことである.日本考古学史上最大の汚点とも言われるこの事件.われわれ一般市民はもとよりマスメディアもさらには考古学会のそうそうたる大家までもが,ひとりのアマチュア考古学者に1970年代からなぜかくも長きにわたって,かくも簡単に騙されつづけたのか.ジャーナリストであり考古学や人類学にも造詣の深い著者が多角的に検証する.にわかには信じがたいような記述がこれでもかとばかり続くが,そのしつこすぎると思えるような記述がこの事件の単純さと計り知れない深刻さを余すことなく伝えている.私にとっては遺跡発掘を生命線とする考古学という方法の特異性と難しさを示した事件であったように思えた.
 みなさんの日本史の教科書はどう扱っていた?
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『ウイーン・フィル 音と響きの秘密』

中野雄 文芸春秋 2002年
 オーケストラの音が常に流れていないと何の仕事も手につかないような人(私と小林さんのことだ!)にとっては,ウィーン・フィルはやはり特別な存在だなあ.ウィーン・フィルと聞いただけで,その華麗でしかも固有の音が頭蓋をみたす.その響きの秘密をウィーン・フィルの歴史やウィーン・フィルを彩った指揮者そして著者が直接接したウィーン・フィル団員とのエピソード等を交えながら練達の文章で描いたクラキチ(暗キチではない)必読の書.とはいっても,本学にクラキチを自称する学生はいるのかどうか.いなかったとしたら,これはちょっと場違いな推薦書だったか….でもどうしてもここにあげたかった1冊.
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