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学生に薦める本 2023年版
熊谷 卓
今年度も、下記のように複数の書籍を推薦します。今年度の推薦のポイントは2つ、第1に、英語を自己のものとするための読書に「ふさわしい」というか「手助け」となる書籍であること、第2に、ディストピア的な世界(社会)の実相を、(そうならないためにも)確認することができる書籍であること、です。付言するならば、自己の母語以外の言語を通じた読書は、自己がおかれた世界(社会)の本質を認知するための大きな手がかりとなると考えています。したがって、これらの推薦のポイントは実はしっかりと絡み合っているといえます。
『誓願』
- マーガレット・アトウッド 早川書房 2020
先に述べた書籍の「続編」ですが、推薦者(熊谷)は、NZオークランド大のキャンパス内書店で、本書のキャッチーな色彩の表紙に釣られて思わず買ってしまい、最初は英語版で読みました。しかし、「聖書」等に関する記述もあり、内容把握にやや苦労した思い出を有しています。その点、日本語版には注釈(説明)も付してあり、ありがたいです。鴻巣友季子さんの日本語訳も素晴らしいです。
『生まれたことが犯罪! ? 』
- トレバー・ノア 英治出版 2018
ディストピア的世界を体験したとも言える、南アフリカ生まれの著者が語ります。読むととても元気が出ます。留学するかどうかを考えている時に、就活時に、または何か落ち込んだ時に絶対読んで欲しいです。Netflixでは彼の Stand up comedy(一人漫才のようなもの)を楽しむこともできます。
『The Maidens』
- Alex Michaelides Weidenfeld & Nicolson 2021
通学中だろうが、講義中だろうが、どこでも「軽―い」気持ちで読むことができ、かつ、自然な英語に触れることができるページ・ターナーのひとつとして本書を推薦します。舞台は大学での殺人事件で、被疑者は大学教授という定番といえば、あまりに定番のストーリーですが、英語がとても自然です。形容詞や副詞が過多で鼻につくかも知れませんが、それはそれで、「勉強」になります。
『The Silent Patient』
- Alex Michaelides Orion Fiction 2019
推薦理由は上記書籍と同じです。付け加えると、上記書籍の前に、著者が執筆し、ベストセラーになったのが本書です。英語ですが、読んでいて肩がこりませんよ!
『A Line to Kill』
- Anthony Horowitz Penguin Books 2021
『殺しへのライン』
- アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫 2022
読書って、そもそも「面白くないと」読み切ることはできませんよね(そういう意味では、会議で配布される文書や資料を読破することは至難の技かと、「辛いなあ!」)。ミステリー書籍は、その点あまり心配なく、たいてい「面白い」のがその特徴でしょう。本書もその例に漏れず、読み手をグイグイ牽引してくれます。ある種、ホームズとワトソン的な「2人の」主人公(元警察官の私立探偵と彼に嫌々付き合うミステリー作家)がケースを「解決」する「事件簿」です。英語も実用的で、分かりやすいです。
『Convenience Store Woman』
- Sayaka Murata Granta Books 2019
『コンビニ人間』
- 村田沙耶香 文藝春秋 2016
ある種の「ディストピア」世界(社会)の描写ともいえるでしょう。Amazonで良いので、英語で書かれた本書籍のreviewsも読んでみて下さい。自分達が何気なく所在するというか、所在させられている世界(社会)の異質さを感じることができるかもしれません。