学生に薦める本 2023年版

藤本 直生

 今年度は、結婚と家族をテーマに選んでみました。ひと昔前と違って、最近では結婚観や家族のあり方がずいぶん多様化してきました。今回紹介する本やDVDは、世界各国の結婚や家族について取り上げていますので、ぜひ読んでみて下さい。

『フジモト先生のビューティフル★アメリカ
~Some Stories in Missouri~』

藤本直生 銀河書房 1995
 この本は今から約30年前、私が長野県の中学校に勤めていた時に教え子のために書いた本です。本校の派遣留学先である University of Central Missouri(UCM)は、アメリカの中西部ミズーリ州にありますが、そこは長野県と姉妹州でもあります。そのような関係で、私は1992年の夏に派遣団の一員として3週間ほど、ミズーリ州で4つの家庭にホームステイさせていただく機会に恵まれました。アメリカの家族と寝食を共にし、多くを学ぶことができました。これからアメリカへの派遣留学を考えている人にお薦めの1冊です。
[OPAC]

『乙嫁語り』

森薫 KADOKAWA 2009
 この漫画は、19世紀の中央アジアが舞台となっていて、結婚や家族を中心に描かれています。当時の中央アジアでは、結婚は親が決めるものと考えられていて、主人公のアミルは20歳で遠くの村から馬に乗って花婿のいる町にやって来ました。15,16歳が結婚適齢期とされていた時代だったので、アミルはきっとおじいさんと結婚させられると思っていましたが、なんと花婿は8つ下の12歳の少年でした。年の離れたカップルの成り行きにハラハラ・ドキドキすると同時に、多様なイスラム圏の文化を学ぶことができます。
[OPAC]

『Klara and the Sun』

Kazuo Ishiguro Alfred A. KNOPF 2021
 主人公のKlara は Artificial Friend (AF) というロボットです。お店の陳列棚に他のロボットと一緒に並んでいましたが、ある日 Josie という少女が母親に連れられて店を訪れ、 Klara を購入します。 Klara は Josie 一家と生活することになりますが、ほどなくJosie が不治の病におかされていることを知ります。Klara は救いをおひさま(The Sun)に求めます。Josie の病は良くなるのでしょうか。ロボットと人間の共存について、深く考えさせられるお話です。ノーベル文学賞受賞作家の最新作を、ぜひオリジナルの英語で読んでみて下さい。
[OPAC]

『正しいパンツのたたみ方』

南野忠晴 岩波ジュニア新書 2011
 著者の南野さんは、大阪府立高校で初の男性家庭科教員の一人です。もとは英語教員でしたが、生徒たちに生活に直接役立つ教科である家庭科を教えたいということで、教員採用試験を再受験して家庭科の教員となりました。南野さんによると、家庭科は衣食住など自分の暮らしを自分で整える力を養うだけでなく、社会の中で生きていく力を育てる教科だそうです。
 「正しいパンツのたたみ方」という題名は、教員の勉強会に参加した際、男性教員のAさんの発言にヒントを得て付けられました。共働きが多い現代では、男女を問わず家事をするようになりましたが、Aさんは妻から下着のパンツのたたみ方が悪いと苦情を言われ、困ってしまいました。もともと他人であった夫婦が一つ屋根で暮らすには、お互いのパンツのたたみ方一つを取っても、尊重して譲歩する姿勢が必要だということなのでしょう。とは言うものの、私自身Aさんの妻のように、夫のパンツのたたみ方に文句を言っている自分に気付き、ハッとさせられました。
[OPAC]

『Four Weddings and a Funeral』

Richard Curtis Pearson Education 1999
 本書はイギリスの劇作家、リチャード・カーティスが若かりし頃、毎週のように友人の結婚式に出席していたことを思い出し、それにインスピレーションを得て書いたそうです。文字通り、4つの結婚式と1つのお葬式が話の中心となっています。1993年に映画化されて、イギリスをはじめ世界中で大ヒットしました。DVDもありますので、そちらも合わせて観ることをお薦めします。
[OPAC]

『Four weddings and a funeral』(DVD)

マイク・ニューウェル監督 20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン 2007
 1993年にリリースされ、イギリスをはじめ世界中で大ヒットしました。私もこの映画を見て、素敵な結婚式が挙げられたらなあ・・・と思っていたら、なんとその夢が留学先のイギリスで叶いました! Penguin Readersの本もありますので、そちらも合わせて読んでみて下さい。
[OPAC]

『弟の夫』

田亀源五郎 双葉社 2017
 ある日、男手一つで娘を育てる主人公、弥一のもとに亡くなった双子の弟の夫だという、カナダ人の男性が現れました。「パパに弟がいたの?」「男同士で結婚ができるの?」と小学生の娘は、カナダ人のおじさんに大はしゃぎ。弥一は弟の夫を通して、同性婚やジェンダーへの理解を少しずつ深めていきます。
[OPAC]

『リキシャガール』

ミタリ・パーキンス 鈴木出版 2009
 本書は、女性が外で働くことが許されていないバングラデシュが舞台となっています。主人公のナイマは10歳の女の子で、村で一番絵を描くのが上手です。お父さんは働きづめで体を壊してしまいましたので、代わりに彼女が働くことを思い付きました。リキシャという人力車に絵を描く仕事ですが、彼女の計画はうまくいくのでしょうか。子供向けの児童文学書ですが、バングラデシュの文化や習慣が興味深く描かれています。
[OPAC]

『The Life Stories of Peter and Margaret Adamson』

Kiyotaka Sato Research Centre for the History of Religious and Cultural Diversity 2020
 本書は、明治大学で社会学を教えていらした佐藤清隆先生が、私の夫の両親にインタビューした記録をもとに書いたものです。私の義父母はイギリスのレスターという人口30万人の、ロンドンから北へ特急列車で90分ほどの地方都市に住んでいますが、そこはまさに【人種るつぼ】という形容がふさわしい、多くの移民が暮らす街です。日本人でレスターに縁のあるといえば、サッカー選手の岡崎慎司が在籍していたチームというと、お分かりになる方もいるかも知れません。
 戦前に生まれた義父母がどのようレスターで人生を送り、また日本人の嫁(私)を家族として受け入れて来たかが描かれています。すべて英語で書かれていますが、写真もたくさん入っていますから、読みやすいかと思います。
[OPAC]

『Weddings』

Christine Lindop Oxford University Press 2011
 本書では、世界各国の結婚式が紹介されています。結婚の習慣はそれぞれの国で違いますが、それを結婚式の前と後や、式での衣装などさまざまな観点から紹介しています。イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃の婚約指輪や日本の結婚衣装も出てきますよ。Oxford BookWorms レベル1の本ですから、簡単な英語で書かれていますので、読みやすいかと思います。
[OPAC]
※2023年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)