学生に薦める本 2023年版

小林 伊織

『Language Policy and Language Planning 2nd Edition』

Sue Wright Palgrave Macmillan 2016
Big languages bully smaller languages. Smaller languages fight back. When small languages finally gain power, they in turn bully even smaller languages. This is what the author calls a “Russian doll problem.” The author argues that it’s getting easier for smaller languages to gain power thanks to the internet and globalization. How will the newly emerging nationalisms of the post-COVID world affect small languages?
[OPAC]

『ことばと国家』

田中克彦 岩波新書 1981
言語が国家を作った?それとも、国家が言語を作った?

台湾人は戦前は日本語、戦後は中国語を使って来たが、近年中国からの軍事的圧力が高まる中、苦労して台湾語を学ぼうとする若者が増えている。ウクライナでも、都市部ではロシア語が日常生活に使われてきたが、戦争以来、生活も創作もたとえ不自由でもウクライナ語を使おうとする人が増えているらしい。

世界に言語が7000種。国は200足らず。ほぼ全ての国が他言語社会。人類の大多数はマルチリンガル。一見モノリンガルなのは、大きな言語が人工的に固定され、小さな言語が意図的に排除された結果?権力者の言語は、人並みの努力ではマスター不能なぐらい難しいほうが都合いい?例えば東洋の漢字や西洋の文法。
[OPAC]

『Language Death』

David Crystal Cambridge University Press 2014
The vast majority of world’s languages are said to become extinct in the near future. Is that good or bad? Why? What if you were a parent? Would you teach your children your language so that it will not die? Or would you teach them the majority language so that they can hope to get better jobs and communicate with the wider world? What if you were a teacher? Would you try to help a student retain his or her language, or would you help him or her with the majority language so that s/he can catch up with the schoolwork? What if you were a politician? Would you protect minority language so that cultural identities can be preserved, or would you make sure everyone understands the majority language so that they can participate fully in democracy? The choice is yours.
[OPAC]

『「国語」の近代史』

安田敏朗 中央公論 2006
タイムマシンで自分の5代前のご先祖様に会いに行ったら、言葉は通じるか?もし通じないとしたら、あなたは悲しむだろうか?気にしないだろうか?

「国語」は作られた。そして植民地に強制された。植民地が独立すると、同じ国語イデオロギーが、今度は新しい「国語」に当てはめられた。それもSue Wrightの言う「マトリョーシカ問題」。
[OPAC]

『The Mind Map』

David Morrison Cambridge University Press 2009
Reading an interesting story that’s difficult to stop without using a dictionary is the best way to improve your English. If you understand about 70% of the story, that means it’s the right level for you. Keep reading, and you’ll notice that your English has improved automatically.
[OPAC]

『イギリス英語発音教本』

小川直樹 研究社 2017
発音できない音は聞き取れません。だから発音の本はリスニング強化に役立ちます。手の筋肉を使うと、口の筋肉が覚えます。英国ではたった3%の人にしか使われていない容認発音(RP)ですが、豪・NZ・インドを始め、全世界で手本として教えられているので、必ず役立ちます。TOEICのリスニングも、一部、英・豪発音で出題されています。もちろん、微調整でアメリカ英語にも応用可能です。
[OPAC]

『Bilingual Education in the 21st Century』

Ofelia Garcia Wiley-Blackwell 2008
Is bilingual education the way to go? Taiwan has decided to transform itself into a “bilingual nation” by 2030. Will it work? Will it make life easier or more difficult for children? Let the “godmother” of bilingual education and translanguaging answer these questions, and it’s up to us if they apply to our situations.
[OPAC]

『石垣島で台湾を歩く―もうひとつの沖縄ガイド』

国永美智子 (著), 松田ヒロ子 (著), 松田良孝 (著), 水田憲志 (著), 野入直美 (著) 沖縄タイムス社 2012
沖縄県の与那国から台湾の蘇澳まで111キロ。新潟市から上越市より近いです。天気が良ければ台湾が見えます。東日本大震災の義援金に感謝するため、東北の若者が与那国から台湾まで泳いだそうです。戦前は、八重山と台湾は同じ標準時、同じ通貨で、高校進学は台湾まで行っていたそうです。台湾では多くの八重山出身者が出稼ぎしていたし、石垣島には台湾人が水牛を使ったパイン農業と缶詰工場の技術をもたらしました。戦中は多くの島民が台湾に疎開させられたそうです。今ではたった25分のフライト(石垣から那覇までの半分以下の距離)で台北から観光客が押し寄せ、台湾発のシェア電動スクーターを使って観光しているそうです。新潟から直行便で台湾に観光に行くのも良いですが、石垣島で台湾を歩いてみるのも楽しいかもしれませんね。
[OPAC]

『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』

野嶋剛 扶桑社 2020
私は2021年9月から1年間台湾で海外研修を受けました。前半、台湾はまだゼロコロナ政策をとっており、世界中でコロナが未だ猛威を振るう中、私はコロナから世界で一番安全な環境にいました。2019年12月、台湾は世界で最初に中国の武漢で流行爆発が起こっていることを察知し、WHOに通報しました。しかし、他国からの圧力により台湾を排除しているWHOはこの通報を無視しました。WHOが「マスクは逆効果、旅行制限は不必要、人と人の感染はない」と言っていた1月中には、台湾は中国との往来を完全にシャットアウトしました。ちょうど、武漢からの観光客が札幌雪まつりに押し寄せていた頃です。その後、台湾でもマスク不足騒動が起こりましたが、デジタル大臣が、国中の薬局のマスク在庫量がわかるアプリや、国民全員がマスクの配給を受けられる制度をたった数日で構築し、解決しました。まもなく台湾は、中国にマスクを寄贈したあと自らマスク不足に陥った日本にマスクを大量寄贈できるほどになりました。個人情報が守られたSMSを使ったシステムで、感染者が出入りした場所に出くわした人全員にすぐに連絡が来るので、保健担当役所や医療機関がパンクすることはありませんでした。なぜこんなにうまく行ったのか。私が台湾で強く感じた点は:
 1. 民主的な市民社会の成熟
 2. 政府の徹底した情報公開
 3. 国民の政府に対する信頼
この3つがあったために、海外発のフェイクニュース攻勢もかわすことができました。
[OPAC]

『台湾に何が起きているのか』

福島香織 PHP 2022
日本の小・中学校で使われている地図帳には台湾という国がない!?国民がいて、彼らが直接選挙で選んだ政府があって、それがその領土を統治している台湾。それが国ではない!?どういうことでしょうか?中華民国と台湾の関係は?この根本的な問に答えようとする本は星の数ほどあるのですが、割と新しくて手っ取り早いのが本書、特に第4章です。そこで歴史を復習したら、あとは刻一刻変わっていく最新情報を自分でウォッチしてください。
[OPAC]
※2023年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)