学生に薦める本 2023年版

吉澤 文寿

『先生、どうか皆(みんな)の前でほめないでください いい子症候群の若者たち』

金間大介 東洋経済新報社 2022年
 この本は大学生のみなさんについて論じています。この本を読むと、一般論としてみなさんがどのように語られているのか、その一端が分かります。「いい子症候群」だそうです。推薦者の私の関心は、この本を読んだみなさんがどう感じるか、ということです。

 内容の一部を紹介すると…「現役の大学生がもっとも嫌だと思う講義はどれか?」

  ・座席が指定されている
  ・いつも時間を延長する
  ・内容が難しすぎる(半数が不可になる)
  ・当てられる
  ・講義室の空調が効かない(効きすぎる)
  ・講師の言っている意味が分からない
  ・成績上位者が公表される
  ・1限に開講されている

 どれを選ぶでしょうか。著者が調査した結果を知りたい人は是非読んでみてください。
[OPAC]

『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』

稲田豊史 光文社 2022年
 これも「あるある」でしょう。インターネットで動画を見る環境が普及し、新型コロナウイルス感染症の拡散で遠隔授業を受けるようになった私たちにとって、「ビデオは等倍より早く観る」という習慣が身についてきました。「タイパ」なる言葉も現れました。「観賞する」というより、「消費する」ようになった私たちの行動について、この本は解き明かしていきます。
[OPAC]

『みんなの「わがまま」入門』

富永京子 左右社 2019年
 この本は、「わがまま」というツールを使いながら、言いづらいことを言いやすくするための本、そしてそこから、社会や政治といった「遠い」ことがらを身近な視点から見ようとする本です。(「はじめに」より)
 「意見を言うことへの「抵抗感」をときほぐし、みんなで社会をつくるための5つの講義」(帯より)
 「わがまま」を言うことは必ずしも「自己中」ではありません。みなさんが抱えている不満やモヤモヤについて「わがまま」を言うことは、何がしか社会に関わることであり、政治に働きかける「芽」をつくることでもあると、著者は語ります。ふだん考えていることをいかに表出し、自分を取り巻く社会と関わっていくのか―このようなテーマに関心がある人は、是非手に取ってみてください。
[OPAC]

『韓国学ハンマダン』

緒方義広、古橋綾(編) 岩波書店 2022年
 近年、韓国朝鮮研究の入門書をつくろうという出版業界の動向があります。高校までに韓国朝鮮についてしっかり勉強することはほとんどないといってよいでしょう。本学のように、地域研究関連の科目として、現代社会、歴史、文化、日本との関係など、基幹となる科目が設定されていると、その科目ごとに参考図書を選ぶことになります。ただ、それらをうまくつなげてくれるような本を一冊くらい読んでおいてもよかろう、ということで、この本を薦めます。
 「ハンマダン」は直訳すると「一つの広場」ですが、さまざまな由来を持つ者が交流する場ということです。「基礎知識はあるけど、その先の情報がない―そんなあなたの韓国理解をアップデートする1冊」と帯に書いてあります。一つ一つのテーマについて、わりと深いところまで掘り下げてくれるというのが私の読後感です。韓国朝鮮に関心がある人は是非読んでみてください。
[OPAC]

『韓国という鏡 新しい日韓関係の座標軸を求めて』

緒方義広 高文研 2023年
 長年韓国に暮らした経験がある著者が語る現代韓国論です。入門書としては『韓国学ハンマダン』よりもこちらがよいでしょう。現代社会、歴史、そして人々が取り組んでいる課題について、読みやすく書かれています。「韓国社会への深い理解は、日本社会の発展にとっても重要な参考事例を提供してくれることとなり、また、韓国を大切なパートナーとしてともに発展していくことにも繋がっていくだろう」(269頁より)という著者の考えに共感します。
[OPAC]
※2023年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)