学生に薦める本 2026年版

中村 貴

『「在外」日本人』

柳原和子 講談社 1998年
 私には小さな不満があります。それは、日本国内に住む外国籍の方々や外国人観光客が注目されるのに比べて、海外に住む日本人(海外在留邦人)はほとんど見向きもされないということです。現在、約130万人の日本人が海外で暮らしています。ビジネス・留学・就労者の家族としての滞在など、その目的は様々です。
 では、彼らは異国の地でどのような生活を送り、どのような「景色」を見てきたのでしょうか。本書は少し昔の本ですが、世界各国で暮らす日本人のインタビュー記録です。興味のある国から読むのもよし、面白そうなタイトルから読むのもよしです。彼らの記録を読むと、思わず海外に滞在してみたくなるかもしれません。もしそうなったら、短期間でもいいので、ぜひ日本という「内なる世界」を飛び出して、「外の世界」を見に行ってみてください。
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『大地の咆哮:元上海総領事が見た中国』

杉本信行 PHP研究所 2006年
 日中関係が気になる方へ。著者は、元外交官で上海にある日本総領事館の総領事を務めた方です。外交官として長年中国と関わり、日本側の代表者の一人として見た「中国(中国という国、中国の人民、中国文化など)」は、一体どのようなものであったのか。日中関係を軸に、自身の経験に基づいて書かれています。日本を愛し、中国を愛した著書渾身の作品です。病魔に侵され病床で執筆された本書には、著者の熱い思いが詰まっています。『大地の咆哮』、このタイトルの意味が分かった時、読者である皆さんの心は震えることになるでしょう。
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『「友好」のエレジー:中国人がみる「日中国交正常化五十年」』

王柯 編 藤原書店 2022年
 「日中友好」という言葉がこれほど空虚に感じる時代もないのではないか、と思われるほど昨今の日中関係は良くありません。ただ、「友好」は両国の政治関係のみに用いられるものでしょうか。両国関係というのであれば、政治・経済・文化など、様々な交流の「形」があるはずです。
 本書は、日本と関わりの深い中国の学者・作家の方々からみた「友好」のお話です。印象に残った言葉を紹介します。「国家の権威に翻弄される「友好」や「反日」より、「個」としての民間的な人間交流こそが、民族や国を越えた真の人間同士の交流なのではないだろうか。このような「個」としての人間交流が多ければ多いほど、お互いに、相手の立場でものを考え、相手の立場を理解し、尊重し合うことができるだろう」(唐辛子 コラムニスト、116頁)
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『忘れられた日本人』

宮本常一 岩波書店 1984年
 民俗学者である宮本常一が、昭和初期に日本全国津々浦々を歩いて、地元の古老たちから聞き取った彼らの生活の記録。人はなにを目的に、なにを幸せに感じて生きてきたのだろう。人々の語りから、当時を生きた人々の生活の様子とともに、その喜怒哀楽をも感じることができる不朽の名作です。印象に残った言葉を紹介します。「はァ、おもしろいこともかなしいこともえっとありましたわい。しかし能も何にもない人間じゃけに、おもしろいということも漁のおもしろみぐらいのもの、かなしみというても、家内に不幸のあったとき位で、まァばァさんと五十年も一緒にくらせたのは何よりのしあわせでごいした。だいぶはなしましたのう。一ぷくしましょうかい。」(梶田富五郎翁、192頁)
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『マンゴーと手榴弾:生活史の理論』

岸政彦 勁草書房 2018年
 人の話を聞いていると、ふと、その人の人生に入り込んだような感覚になることがあります。人の人生を「覗き見」したような感覚です。人々の生活の歴史とは、人々の人生そのものです。では、それをどのように研究したら良いのでしょうか。著者は、長年沖縄の人々の語りを研究してきた専門家です。マンゴーと手榴弾、これは人々の語りに出てくる重要なキーワードです。そこに、どのような意味が込められているのでしょうか。生活史に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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※2026年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)