学生に薦める本 2026年版

小宮山 智志

『AIは私たちの学び方をどう変えるのか』

サルマン・カーン 東洋館出版社 2025年

『スマホ脳』

アンデシュ・ハンセン 新潮社 2020年
 私たちはいま、学びの歴史における大きな転換点に立っています。生成AIの急速な普及は、「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」という問いを、あらためて考え直させています。その意味で、この二冊を合わせて読むことを勧めたいと思います。

 一冊目、Salman Khan著『AIは私たちの学び方をどう変えるのか』は、カーン・アカデミー創設者による、AI時代の教育への前向きな提言です。AIチューターが学習者一人ひとりの理解度やペースに応じた対話を可能にし、これまで限られた人にしか届かなかった質の高い教育が、より広く開かれていく可能性を示しています。 本書は、暗記中心の学びを相対化し、批判的思考や創造性、問いを立てる力の重要性をあらためて考えさせます。

 二冊目、Anders Hansen著『スマホ脳』は、精神科医の立場から、スマートフォンやSNSが人間の注意や集中、記憶、睡眠に及ぼしうる影響を問いかける本です。テクノロジーが私たちの生活を便利にする一方で、深く考えるための土台そのものが揺らぎうることを、一般読者にもわかりやすく示しています。

 一見すると、Khanの本はテクノロジーの可能性を語り、Hansenの本はデジタル環境への警鐘を鳴らしているように見えます。しかし、この二冊を重ねて読むことで、AI時代の学びにとって本当に重要なものが見えてきます。どれほど優れたAIがあっても、学習者に深く考えるための集中や、知識を自分の中で結びつける力がなければ、その力を十分に生かすことはできません。

 AIが多くの答えを返してくれる時代だからこそ、問いを立てる力、その問いに対して新たな仮説を構築する力、そして粘り強く考え続ける力は、ますます重要になります。この二冊は、AIをどう活用するかという視点と、デジタル環境のなかでどう主体的に学ぶかという視点の両方から、これからの学びを複眼的に考える機会を与えてくれるでしょう。どちらの本も、専門的な予備知識なしに読むことができます。一冊を読み終えたあとで、ぜひもう一冊も手に取ってみてください。
[OPAC]
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※2026年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)