学生に薦める本 2004年版

長坂 格

『或る「小倉日記」伝』

松本清張著 新潮社 1998年
 フィリピンでフィールドワークをしている日本の大学院生のあいだで回し読みされていたので、私もフィリピンの田舎で読んだ。いくらがんばってみても、結局は巨大な権力や構造に跳ね返されてしまう主人公が次々と登場する。読んだ後に自分の将来に大きな不安を感じたが、それからあまり小説を読まない私が、たまに松本清張の短編小説を買うようになったのも事実である。
[OPAC]

『サンダカン八番娼館』

山崎朋子著 文藝春秋 1982年
かつての日本からの海外売春婦「からゆきさん」についての聞き書き。神戸の古本屋で買って、電車の中で読み始め、家でいっきに読み終えた。大変力のこもった作品である。底辺女性史の作品として評価があるこの本は、聞き書きの困難の記録としても読める。
[OPAC]

『カルティニの風景』

土屋健治著 めこん 1991年
東南アジアについての日本語で書かれた名著を挙げよ、といわれたときに真っ先に思い浮かぶのがこの1冊。主題はインドネシアのナショナリズムだが、インドネシアに興味がなくても、面白く読める。たいそうやさしく書いてあるが、奥は深い。
[OPAC]