学生に薦める本 2001年版

澤口 晋一

『青春を山に賭けて』

植村直己著 文藝春秋 1977年
 奇想天外・痛快無比.日本が生んだ不世出の登山家・冒険家である植村さん青春の記.ザックの中にテントと寝袋とこれ1冊持って言葉も通じないどこかへ一人で行ってしまいたくなるから不思議.飾り気の全くない朴訥とした文章が居ても立ってもいられなくなるような感動を呼び起こす..植村さん最初の書.読んでくれ!!
[OPAC]

『カナダ=エスキモー』

本多勝一著 朝日新聞社 1981年
 世界で最も単調な環境に生活するカナダ=エスキモーとの生活のルポルタージュ.われわれ日本人と同じモンゴロイドでありながら最もかけ離れた生活をする人々と寝食をともにしながらエスキモーという知られざる人々の食生活から習慣・価値観など多方面にわたって明らかにしたもの.本多節ともいうべき明快かつ迫力ある文章によってわれわれは知らず知らずのうちにカナダ=エスキモーとの生活へ引きずり込まれていく.「さあ大変だ.私はイスマタの一口分の,三分の一くらいを手にする.ねずみ色の,ヌルヌルの,ドロドロの,細長い物体.もう泣きっつらだ.思いきって口に投げ込んだ瞬間,表現不可能な味を全身に感じた.強烈な生臭さと,にがみ.さらに糞の臭い.それらがいっしょくたになって「味」などというものではない.どうしてものみこむことができず,はきだした.エスキモーたちは腹をかかえて大笑い.イスマタはウドンでも食うようにどんどん腸を食いつづける」.これを読んで,やっぱりエスキモーは野蛮だ,残酷だと感じた人は,この本を是非読んでみるべきだろう.「野蛮」「残酷」さらには「文化」といった言葉の真の意味を我々は何と誤解していることか!

『チャレンジャー号探検 ―近代海洋学の幕開け―』

西村三郎著 中央公論社 1992年
 19世紀中葉,当時まったく未知の領域であった深海を探るべく3年の年月を費やして世界の海を巡ったイギリスの科学探検船「チャレンジャー号」.この探検によって海全体とくに生物の様相が初めて明らかとなった.深海を探るという難題に立ち向かった乗組員たちの自然との戦いと難題を解決するための数々のアイデア.そして初めて明らかとなる深海生物たち.やや細かい話もあるが物語的なタッチで一気に読ませる.こういう本もたまにはいかが.
[OPAC]

『越後三面山人記-マタギの自然観に習う-』農文協人間選書

田口洋美著 農山漁村文化協会 2001年
 三面は羽越地方を代表するマタギ集落であったが,1985年9月に三面ダム建設に伴なってその長い歴史を閉じた村である.著者の田口さんは,三面閉村が決まった翌1982年から閉村までの4年間この村に入り,人々と生活を共にしながら村の四季の暮らしを丹念に記録した.「山が好きだ.」という一文から始まる文章は全編通じて,三面の風景や人々の生活が眼に浮かぶようで実に味わい深い.消えゆく日本の山村の民俗文化を後に伝える貴重な書であるだけでなく民俗学的研究書としても第一級だと確信する.国際化・情報化も確かに大事だが,ここに書かれてあるような何百年,いや何千年と伝えられてきた足元の伝統・文化をすっかり捨て去り忘れ去って,いったいわれわれ日本人は何を目指して何処へ行こうとしているのか.新潟で生まれ育った諸君に是非読んでもらいたい1冊.
[OPAC]

『新しい地球観』

上田誠也 岩波書店 1998年

『日本列島の誕生』

平朝彦 岩波書店 1990年
 この2冊.まずは「新しい地球観」.そして「日本列島の誕生」と読んでほしい.基礎的知識がない人にはちょっと難しいかもしれない.しかし,この2冊を読むことによって地球とその一部である日本列島というもののカラクリの概要を理解することができる.とにかく地球科学のスケールの大きさとその謎解きの面白さに必ずや引きこまれる,だろう….
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