学生に薦める本 2001年版

小宮山 智志

『陰陽師』

夢枕獏 文藝春秋 1991年
 今年の春にNHKでドラマ化され、今秋には映画化され、そして随分前からコミック化されているものの原作です。この話の“呪”の考え方は、私の専門の社会学と大変関連があります。「ものの根本的な在様を縛るというのは、名だぞ」(第1巻31ページ2行目)「人はな、この天地の間に在るものを理解していくのに、呪をもってするということだ」(付喪神の巻204ページ7~8行目)
 私の今年度の「情報文化」または昨年度・今年度の情報システム演習3の「基本的数学モデル」とそっくりでしょう? こんな会話が、夜毎、安倍清明と源博雅の間で酒を組み交わしながら繰り広げられます。こんな風に講義できるといいのだけれど。

『数理の発想でみる社会』

小林淳一・木村邦博 ナカニシヤ出版 1997年
 我々は“当たり前・常識”(=呪い、そして“吉田民人”の“プログラム”の一種)に縛られ、ものを見、行動しています(男だから・女だから・新潟国際情報大学生だから...)。いったいどんな仮定(呪い)に縛られているとどのような結末が予想されるのか? その仮定を少し変化させると結末はどのように変わるのか? これらの問いについて数学を使って答えようとしているのが、この本です。たくさんの人々が大変複雑に互いに影響しあって(呪い・呪われて)いる状況について考えるのは大変難しいことですが、数学を使うとスッキリ見えてくることがあります。そんな面白さが味わえる本です。
 この本を読みと難しいと感じた方は、以下の4.5.の2冊からまず読むことをオススメします(講義・演習等で何度か、お勧めした本です)。

『社会科学のためのモデル入門』

チャールズ・A・レイブ,ジェームズ・G・マーチ(佐藤嘉倫[ほか]訳) ハーベスト社 1991年
「大学時代には10冊しか本を読んではいけない」というルールがあってもぜひオススメしたい一冊。まず読もう。
[OPAC]

『考える社会学』

小林淳一/木村邦博編 ミネルヴァ書房 1991年
『社会科学のためのモデル入門』の次に読もう。これを読んだらいよいよ『数理の発想でみる社会』にチャレンジしよう。
[OPAC]
最後にもう一冊…

『気流の鳴る音 : 交響するコミューン』

真木悠介 筑摩書房 1986
 「情報文化」でご紹介した本です。私は浪人生のころに読み、大変感動しました。自分の常識の「世界」を飛び出す勇気を与えてくれる本です。(飛び出せるかはわかりませんが)
 『陰陽師』の次に読むとおもしろさがわかりやすいかもしれません。浦沢直樹(画)勝鹿北星(作)『MASTERキートン』小学館BC全18巻をイッキに読みとおした後に続けて読めばさらに感動(陶酔?!)できるかも?
[OPAC]