学生に薦める本 2001年版

安達 巧

『MBAクリティカル・シンキング』

グロービス・マネジメント・インスティテュ ート著 ダイヤモンド社 2001年
 ビジネスにおけるコミュニケーション力とは、相手を論理的に説得する能力である。論理的に説得できない限り、担当者はおろか、その企業までもが信頼を失い、ビジネスを継続して貰うことは難しい。ビジネス・フィールドの広がり(一層の国際化)が顕著となっている今日では、全てのビジネスマンが昨日の成功体験が通用しないことに気付いて軽率な一般化を避けることが肝要なのであり、論理的思考力を働かせて相手を論理的に説得することでしか、ビジネスマンは(のみならず企業も)本当の意味での競争力を持てない時代となっている。
 だが、多くの日本人ビジネスマンは、未だに相手を論理的に説得する能力に欠け、相手の論理を理解することができない。おまけに、「クリティカル・シンキング」が重要であることの認識すら抱けずにいる。私は、日本を代表する大企業の管理職と議論をすることも多いが、彼らの論理的思考能力の余りの低さに「こりゃー、ダメだ」と嘆かわしくなることが多々ある。
 学生諸君の多くは、卒業後にはビジネスマンになる。思考力は急速には高まらないのだから、早い時期から訓練をする必要がある。『MBAクリティカル・シンキング』は、思考についての意識を高め、より良い思考へのベースとなる好著であると確信する。
[OPAC]