学生に薦める本 2009年版

佐々木 寛

今年度の前期は、在外研究で本学に不在のため、例年よりも簡単な紹介にとどめさせていただきます。ただ、今年度も引き続き、困難な時代に思考をあきらめず、人間として自立して生きてゆくためにきっかけとなるような本をご紹介いたします。今回は、少しでも「不在」の埋め合わせになればと、いずれも最近私が関わったものを選びました。

『戦争と権力――国家、軍事紛争と国際システム』

ポール・ハースト 岩波書店 2009.2
21世紀は、皆さんが生き抜く100年です。この100年はどんな時代になるのか。それを見通すための本です。あまり明るいことは書かれていません。でも、説得力があります。世界の近代史を鳥瞰して、私たちが生きる時代の条件を力強く明らかにしています。本当の希望をもつためには、私たちが生きる時代の困難な条件を精確に見定めておかなければなりません。そのために、最適の本です。
[OPAC]

『平和学を学ぶ人のために』

君島東彦編 世界思想社 2009.7
平和学の入門書ですが、各分野の一線の研究者が、わかりやすく現在の問題のありかを指し示しています。教育・開発・環境・ジェンダー・アート・メディア・非暴力・国際法・思想・経済・NGOなどなど、多様なキーワードの中から自分なりの世界とのとっかかりを見つけてください。平和学には、きまった「教科書」のようなものはありません。平和学は、同時代の個々具体的な問題と手探りで格闘する中から個々に生み出される創造性の全体を意味します。
[OPAC]

『平和の政治思想史』

千葉眞編著 おうふう政治ライブラリー 2009.8
最近は、「平和」ということばを心に刻んで活動する研究者や政治家が少なくなりました。この本は、「平和」ということばを、今世紀においても深く深く考え続けるための本です。本書も、政治思想史や政治理論の一線の研究者の文章で構成されています。これまで人類がどのように「平和」の問題と格闘してきたのか、じっくり吟味してみてください。そうすれば、「平和」という課題が、皆さんが生きる今の時代にも、依然として最重要の争点であることが分かっていただけると思います。
[OPAC]