学生に薦める本 2009年版

アレクサンドル プラーソル

『巨匠とマルガリータ 上・下』

ミハイル・ブルガーコフ 群像社 2000.3
 名高いロシア作家ブルガーコフ著の傑作「巨匠とマルガリータ」は私の最も好きな作品だ。この小説を初めて読んだのは、学生時代である。それ以来5、6回読み返した。ロシア各地には「巨匠とマルガリータ」のファン・クラブも設置されている。

 作品のマジカルな魅力にひかれた読者は、定期的に集会を開き、登場人物などについて語り合う。本作は2000年にポーランドで、20世紀における世界最高の文学作品として認められた。’05年にはロシアで映画化されたが、この話題作の視聴レーティングは全国で29%、首都モスクワではセンセーショナルな58%に及んだ。

 小説の内容は?――ある日の夕方、モスクワの並木道にやや変な、外国人らしい男が姿を現す。色の違う目をしているし、時としてアクセントの強い、めちゃくちゃなロシア語、時として完璧なロシア語をしゃべる。話の内容も変だ。1804年に亡くなったドイツ哲学者カントとの会見を回想する。話し相手の文学雑誌編集者が、近いうちに珍しい処刑を受けると予言する。「あなたは若い女性によって首をチョン斬られます!このことについて、キエフの叔父に至急に電報でも打ってあげましょうか」と。数分後、引き揚げた編集者は足を滑らせ、路面電車にはねられ首をチョン切られて死んでしまう。この恐ろしい事故は、路面電車の若い女性運転手にショックを与える。予言が見事に実現したことを目撃した詩人は、変な外人を捕まえるよう努力するが、失敗して頭がおかしくなり、精神病院へ運ばれる。

 20世紀前半、悪魔が連れ立ってモスクワを訪れる。市民たちの日常生活にはおかしい、時として恐ろしい出来事が始まるのだ。
[OPAC]

『銃・病原菌・鉄 上・下』

ジャレド・ダイアモンド著倉骨彰訳 草思社 2000年
 ジャレド・ダイアモンド著の「銃・病原菌・鉄」とはピュリツァー賞とコスモス国際賞を受賞して世界的に話題になった本です。カリフォルニア大学の教授である著者はとてもシンプルな質問に答えようとした結果で世界のベストセラーを書きました。
 「なぜアメリカ先住民のほうが逆に旧大陸を征服できなかったのか?各大陸の住民運命を決めたものとは?」などの質問を取り上げるとても興味深い本です。著者は家庭主婦向けの無意味な作り話ではなく、最新の知識をもって人間固有の必然的なおびただしい質問に納得力のある答えを出してくれます。

 「ある社会が他の社会と衝突し、勝者が敗者を征服して取り込む、あるいは消滅させていく。人類史の過程において何度も繰り返されてきたことである。これによって歴史は大きく動き、世界地図における民族の分布が塗り替えられていった。その勝敗を決めたのはたんに銃器や金属製の武器の有無だけではなかった<…> 戦闘用の馬の存在、文字の文化の存在、さらには、その社会がもつ病原菌も大きく影響していたのである。」 (出版社の批評から)
[OPAC]