学生に薦める本 2009年版

山下 功

鉄道で旅に出たくなる本、7題。

『日本鉄道旅行地図帳 全線・全駅・全廃線 1~12号』
『日本鉄道旅行地図帳 全線・全駅・全廃線 1~12号』

今尾恵介監修 新潮社 2008~2009年

『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成1 朝鮮 台湾』
『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成2 満洲 樺太』

今尾恵介, 原武史監修 新潮社 2009年
この地図帳の売り文句は「日本初! 正縮尺の鉄道地図」です。しかしながら、既に廃止された路線や植民地を含めて日本の鉄道を網羅していることが、この地図帳に高い史料的価値を与えています。月刊分冊の鉄道書が氾濫する中で、自信を持っておすすめできます。
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『秘境駅へ行こう!』

牛山隆信 小学館 2001.8

『もっと秘境駅へ行こう!』

牛山隆信 小学館 2003.8
浅岸・大志田・押角。幼少の頃、列車に乗るたびに、「周囲に家が無いのに、どうしてこんなところに駅があるのだろう?」と疑問を抱いていた3つの駅です。多くの鉄道愛好家がこのような駅の存在を既に知っていたのですが、「秘境駅」と名付けて体系化したところに牛山の著作の意義があります。
『秘境駅へ行こう!』は、牛山のWebサイトに掲載されている秘境駅探訪記を加筆修正したものです。それに対して、続編の『もっと秘境駅へ行こう!』は旅行記としての性格が強くなっています。どちらを先に読んでも楽しめます。
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『全線開通版・線路のない時刻表』

宮脇俊三 講談社 1998年
国鉄末期の頃、工事はほぼ完了したものの、赤字が予想されたために開業に至らなかった路線が全国にありました。本書では、第三セクター方式で開業した路線のうち、7つが採り挙げられています。
私が感慨深かったのは、開業日に乗りに行った三陸鉄道です。しかし、皆さんに特に読んでほしいのは、新潟県内を疾走する北越急行ほくほく線の章です。実際に特急はくたかに乗って、在来線最高速の160km/hを体験してください。新幹線より速く感じます。
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『女子と鉄道』

酒井順子 光文社 2008年
酒井の著作で初めて読んだのが、「負け犬の遠吠え」や「枕草子REMIX」ではなく、何とこの本でした。鉄道の魅力がわかりやすく伝わってきます。
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『ぼくは「つばめ」のデザイナー 九州新幹線800系誕生物語』

水戸岡鋭治 講談社 2004年
国鉄がJRになった頃から、鉄道車両が産業デザインの対象として注目を浴びるようになりました。著者の水戸岡はJR九州をはじめ、多くの車両のデザインを手がけています。また、京成電鉄の新型スカイライナーは、ファッションデザイナーの山本寛斎によるデザインで話題になっています。
2005年に2泊3日で「水戸岡鋭治がデザインした10種類の車両に乗る九州鉄道の旅」を企画したところ、普段は鉄道に興味を示さない細君にも好評でした。「九州の鉄道は乗っていて楽しいね」と。他の交通機関との激しい競争の中で、JR九州の鉄道車両が単なる移動手段から魅力ある乗り物へと進化する過程を、この本から読み取ることができます。
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『旅人をつなぐ“マルスシステム”開発ストーリー』

金子則彦 アイテック情報処理技術者教育センター 2005.2
かつて、国鉄やJRの指定券は「マルス券」と呼ばれていました。乗車券や自由席特急券が全て赤地の券だった当時、マルスシステムが発券する緑地の券は、何か特別なものに感じられました。幼少の頃、はつかり・ゆうづる・はくつるなどのマルス券を毎日眺めながら、旅行に行ける日を首を長くして待ったものです。
マルスシステムは今もなお発展を続けていますが、「マルス券」という言葉は死語になってしまいました。なぜなら、システムの高速化と記憶容量の拡大により、指定券だけではなく、乗車券、トクトクきっぷ、JRバス券、駅レンタカー券、宿泊クーポンなど、ありとあらゆる券をマルスシステムで発券できるようになったからです。すなわち、「マルス券」が指定券の代名詞でなくなるとともに、緑地の券も特別なものではなくなったのです。
そして今や、新幹線の指定券情報を携帯電話に記憶することができるようになり、紙としての形さえも失われつつあります。しかしながら、その裏で巨大な情報システムが動いていることには変わりありません。情報システムの構築や運用に興味のある人は必読です。
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『臨3311に乗れ』

城山三郎 集英社 1980年
題名を見て、鉄道書だと思ってしまいました。確かに、3311という列車番号をもつ臨時列車が登場しますが、実は近畿日本ツーリストの社史小説であり、日本に「旅行業」という新たな産業を根付かせるために奔走した人々の熱い思いがあふれています。旅行業界へ就職を考えている人は必読です。
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