学生に薦める本 2005年版

澤口 晋一

『森は生きている』

富山和子 講談社 1994年

『川は生きている』

富山和子 講談社 1994年

『お米は生きている』

富山和子 講談社 1995年

『道は生きている』

富山和子 講談社 1994年
 先日2年ゼミで,「森林土壌の厚さはどれくらいか?」と問うたところ,全然反応がなかった.ヒントを与えた.「5m以上はあると思う人は・・・」.16人中16人の手が挙がった.これは大変なことになっていると思った.中学校・高校はいったい何を教えているのだ.でも考えてみればこんなこと俺だって教わったことはない,けれど少し昔なら皆知っていた(はずだ).今と少し昔.何がどう違ってきたのだろう?地球温暖化,酸性雨,オゾン層,原発,みな重要だ.でも,その前にもっと重要なことがある.その重要なことがこの4冊に示されている.これらは小学校中高学年向けの本である.しかし,人と環境のことに関するもっとも重要なことがもっともやさしくもっとも感動的に書かれた,我々のための本でもある.
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『漂流』新潮文庫

吉村 昭 新潮社 1996年

『おろしや国酔夢譚』徳間文庫

井上 靖 徳間書店 1991年
 「漂流」を題材にした作品二つ.世界が狭くなった現代ではおそらく起こりえない話だろうけれど,ついこの間まで船乗りたちにはよく起こっていたことなのだろう.はからずも漂流してしまった人にはそれぞれにさまざまに壮絶な闘いが待ち受けることになる.『おろしや国・・・』は映画にもなっているので,ご存知の人も多いだろう.ドラマとしてみれば,大きな展開を伴いつつ進むこちらのほうが断然面白い.逆に『漂流』は,最初にたどり着いた絶海の無人島の中だけで話は終始する.文庫本で431ページ.徹頭徹尾暗く長い.これまで数え切れないほどの遭難があり,数え切れないほどの人々が漂流し.そのほとんどは日々絶望的な闘いを強いられ,結局は故郷に帰ることもなく死んでいったのだろう.しかし,そのたびにこの本に語られるような人間愛と生への闘いが繰り返されたに違いない.『漂流』では,主人公は奇跡的に12年後故郷に生還することになるのだが,ここで初めて,「漂流」とは実は生きて帰ることなのだということに私たちは気づくことになる.「漂流」か・・・
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『アラスカ物語』

新田次郎 新潮社 1980年
 あっ ここだ!ワイズマンだ!

 あっ フランク安田の働いていた郵便局だ,そのまま残っている!

 うわーっ これがシャンダラー川か!砂金いまでもあるのか・・・

 おお,あこがれのブルックスレンジ!

 ええっ こんな所徒歩で歩いたのか・・・

 しまった・・・熊だ...

 ついに 来たっ.北極海.真っ白だ.

 在外研究でアラスカ行く前の数ヶ月,アラスカ物語の虜になっていた私.本の中に出てくる場所と実際に出会うたびに「あっ!」とか「どひゃ!」とかいいながら一人興奮する私.舞台はアラスカ中北部.どんな所?説明不能.行かなきゃわからない.でも行くなら『アラスカ物語』読んでから!で,結局どんな話?それは読まなきゃわからない!
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