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小林 元裕
『東京裁判への道』上・下
粟屋憲太郎 講談社選書 2006年
今年は日本の敗戦、すなわち第二次世界大戦の終結から62年目にあたる。
12年前の敗戦50周年当時は、戦後補償裁判が問題になり始めていたこともあり、「終戦記念日」の前後に戦争関係のドキュメントやドラマ、映画がテレビで数多く放映された。しかし最近はそのような特集も年々減る傾向にあり、「戦争の記憶」の風化は着実に進んでいる。
そんな中、今年はいくつかの貴重なドキュメントが放映され、中でも2日に渡って東京裁判を取り上げたNHKスペシャルが目を引いた。初日の「A級戦犯は何を語ったのか」は、国際検察局による戦犯容疑者に対する尋問調書から、A級戦犯と呼ばれた人々の実像に迫るもので、多くを本書の内容によっている。
東京裁判といえば、戦勝国による一方的な報復裁判で結論は最初から決まっていたとする解釈があるが、本書を読めば、事実はそう単純でなく、被告の選定からしてすでに壮絶な政治的駆け引きが展開されていたことが分かる。何が裁かれ、何が裁かれなかったのか。本書は従来の東京裁判論に欠けていた、複眼的な視点を私たちに教えてくれる。
12年前の敗戦50周年当時は、戦後補償裁判が問題になり始めていたこともあり、「終戦記念日」の前後に戦争関係のドキュメントやドラマ、映画がテレビで数多く放映された。しかし最近はそのような特集も年々減る傾向にあり、「戦争の記憶」の風化は着実に進んでいる。
そんな中、今年はいくつかの貴重なドキュメントが放映され、中でも2日に渡って東京裁判を取り上げたNHKスペシャルが目を引いた。初日の「A級戦犯は何を語ったのか」は、国際検察局による戦犯容疑者に対する尋問調書から、A級戦犯と呼ばれた人々の実像に迫るもので、多くを本書の内容によっている。
東京裁判といえば、戦勝国による一方的な報復裁判で結論は最初から決まっていたとする解釈があるが、本書を読めば、事実はそう単純でなく、被告の選定からしてすでに壮絶な政治的駆け引きが展開されていたことが分かる。何が裁かれ、何が裁かれなかったのか。本書は従来の東京裁判論に欠けていた、複眼的な視点を私たちに教えてくれる。