学生に薦める本 2007年版

小野 陽子

『運は数学にまかせなさい : 確率・統計に学ぶ処世術』

ジェフリー・S・ローゼンタール 早川書房 2007年
 「確率が高い」と「可能性がある」とを混同している例を良く見受けます。とかく日本人は確率という言葉に弱いようです。例えば、「いい人の方が高収入:従業員の快活さと親切心が2%向上するたび、年収が1%増加する」との記事は何を伝えたいのでしょう。
 私たちは無作為性と不確実性に満ちた状況や選択の機会にたえず直面していますが、そのことをどれだけ意識して生活しているでしょうか。また、確率を少し勉強したからといって、どれだけうまく役立てられるでしょうか。これらの疑問に明快かつ簡潔に答えているのがこの著書です。身近な問題を紐解くための確率利用本は多く出版されていますが、この著書のように、数学が押し付けがましくなく、また、論理的にもごまかしの無いものは珍しいです。
 読後の謝辞に、私が数年悩んでいる問題の2次元版を論じた統計学者の名前を目にしました。著者の指導教官であったらしいのです。この著書を私が手に取る確率を考えると、これは私への励ましか、あるいは偶然によるものでしょうか。
[OPAC]