学生に薦める本 2011年版

神長 英輔

この文章を書くにあたり、昨年度以前の諸先生方の推薦本を拝見しました。その中にも私が推したい本があります。松尾先生お薦めのバトラー『ジェンダー・トラブル』

(http://www.nuis.ac.jp/ic/library/book/book2010.htm#matsuo)や

プラーソル先生のブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』

(http://www.nuis.ac.jp/ic/library/book/book2009.htm#Prasol)です。興味のある方はそちらもぜひ参照してください。

『東南アジアを知る: 私の方法』岩波新書

鶴見良行著 岩波書店 1995年
私は図書館の書庫で史料の山に埋もれるのが好きですが、ロシア極東の田舎町や市場をぶらぶら歩くのも好きです。本書は現場にこだわり、具体的なモノにこだわる歩く学問の入門書です。読んでは歩き、歩いては読むことで初めて見えてくるものがあります。本を読むのに飽いたら、とりあえず外に出て自分の足で歩きましょう。
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『強く生きる言葉』

岡本太郎著 イースト・プレス 2003年
「人生、即、芸術」、同感です。同時に私は「学問、即、芸術」だと思っています。ページを繰るごとに勇気が湧いてきます。失敗や劣等感こそ、生きるために必要だと思います。
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『水木サンの幸福論』角川文庫

水木しげる著 角川書店 2007年
東京に住んでいたとき、水木先生をよくお見かけしました。その存在感たるや、まさに巨匠でした。先生は「怠け者になりなさい」と言いつつ、若いときは「もっと働け」と言います。人生に迷いっぱなしの私は今でもこの本の「幸福の七カ条」をよく読み直します。
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『精神の生態学(改訂第2版)』

グレゴリー・ベイトソン著,佐藤良明訳 新思索社 2000年

『精神と自然:生きた世界の認識論(改訂第2版)』

グレゴリー・ベイトソン著,佐藤良明訳 新思索社 2006年
あまりにも多様で複雑な世界をどう理解すればよいのか。文化においてもエントロピーが減少しているかのような一定のパターンが生じることがあります。説明不可能と思われるそうした現象を見事に説明してしまうベイトソンに魅せられて10年ほど経ちます。何度読み返しても、示唆に富んでいて飽きることがありません。
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『ミーム・マシーンとしての私 上下』

スーザン・ブラックモア著 草思社 2000年
遺伝子によって生物の進化が説明されるように、文化の変容は模倣を目的とする自己複製子「ミーム」によって説明することができます。ミームについてはさまざまな反論がありますが、私は著者の見解に完全に説得されています。この明快さは快感です。
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『心は遺伝子の論理で決まるのか:二重過程モデルでみるヒトの合理性』

キース・E・スタノヴィッチ著椋田直子訳 みすず書房 2008年
自分も含めた人間は思っている以上に非合理的な意志決定をします。確固たる「私」や統合された「自己」など、実は想像の産物に過ぎません。自分の意志決定のすべてを司る「自分」などというものはありません。逆説的ですが、この本を読んでそうした認識を持つことは個人としての自律性を確保することの助けになります。
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『メディアの法則』

マーシャル・マクルーハンほか著, 中澤豊訳 NTT出版 2002年
メディアを介した人間の知覚のパターンを法則として提示してしまおうという強烈に野心的な試みです。難解ですが、あまりにも明快に社会を読み解いているので、ただただ快感です。
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