学生に薦める本 2011年版

小片 章子(図書館)

『ジェイン・オースティンの読書会』

カレン・ジョイ・ファウラー著 白水社 2006年
ジェイン・オースティンは、18世紀末から19世紀にかけて活躍したイギリスの女性作家で、イギリスの地方都市に住む多感な主人公(主に女性)が、当時の階級社会や家庭生活、道徳観などの中で苦悩しながら成長する物語が多い。物語の多くは幸せな結婚で幕を閉じるのだが、当時の階級社会のイギリスでは、結婚の際に最も重要視されていたのは地位や財産であり、そうした時代を生きる女性の苦悩をジェイン・オースティンの物語で知ることができた。

昨冬、図書館のカウンターに座っていたら、女子学生が“やっと卒論を提出したので、これから好きなだけジェイン・オースティンを読めます!”と話してくれた。ジェイン・オースティンが根強く愛されていることを実感した。

本書「ジェイン・オースティンの読書会」は、さまざまな年齢・境遇の友人の女性5名と男性1名が開催するジェイン・オースティンの6編の長編作品を題材にした「読書会」を軸に進んでゆく。

物語の舞台は、読書会が大流行していたアメリカ・カリフォルニア州の州都サクラメント。

メンバーは、

 ○結婚と離婚を繰り返すバーナデット 

 ○独身の犬のブリーダーのジョスリン

 ○ジョスリンの親友で離婚協議中のシルヴィア

 ○シルヴィアの娘で同性愛主義者のアレグラ

 ○既婚の高校のフランス語教師で教え子と恋愛関係寸前のプル―ディー

 ○オースティンよりSF好きの大学の事務部門のIT技術者で唯一の男性会員のグレッグ

の6名がそれぞれ1作品を選び、リーダーになって進行する読書会を月1回開催する事になる。

ジェイン・オースティンについてメンバーが語り合う「読書会」の様子と読書会のメンバーのさまざまな人間模様とが混在して物語が進行してゆく。

読書会は、メンバーの家や海辺、病室など、様々な場所で行われ、ホームパーティ、海辺のピクニック、お茶会スタイルなどで催されて興味深い。飲み物や食べ物の描写もとても楽しめる。

読書会では、最低限の協調性を必要とするが、それ以外は束縛される事がなく、自由に意見を言える。時には激しい議論になるが、新しい解釈に気付かせてくれる。

メンバーそれぞれが読書会に参加することで変化し、成長して本書は終わるのだが、読書の楽しさと好きな本に出逢った幸福を思い出させてくれる1冊である。
[OPAC]