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学生に薦める本 2011年版
佐々木 寛
今年度のテーマは、「世界は変わる――何処へ?」です。多くの日本人は、依然として阿呆のように眠ったままですが、世界では、大きな地鳴りが聞こえています。きたるべき世界のあり方について今からじっくり考えておかないと、私たちは単にその大きな濁流に飲み込まれるだけの、はかない歴史の藻屑(もくず)となって消えてゆくだけでしょう。しかしたとえ、藻屑は藻屑でも、私たちは少なくとも、自分で考える、覚醒した藻屑でいたいと思います。今は、焦らず、泣かず、わめかず、…ただひたすら勉強するだけです。
『世界リスク社会論:テロ、戦争、自然破壊』ちくま学芸文庫
- ウルリッヒ・ベック著 筑摩書房 2010年
現代もっとも注目される世界的な社会学者が、テロ・戦争・テクノロジー・環境問題などを串刺しに論じます。めまぐるしく生起する日々の事件やニュースを単に個別に消費するだけでなく、まずは、その基底部分にある共通の問題性――「近代」という時代/論理の構造的な変容――について考えてみましょう。
『革命について』ちくま学芸文庫
- ハンナ・アレント著 筑摩書房 1995年
また、たとえば、私たちが住む日本からはずっと遠くで起こっているように見える「ジャスミン革命」と、その後の国境をまたいだ「民主化」のうねり。これをどう評価すればいいのでしょう。それはきっと、これから世界規模で展開される、長くて大きな「世界革命」のはじまりです。しかし、本書を読めば、不平等や社会問題の解決として生まれる、まさに「近代的」な意味での「革命」が、それ自体大きな危険性をはらんでいること、また「革命」の真に良質な遺産は、意外にも別のところにあることを発見できるでしょう。
『ガンジーの危険な平和憲法案』
- C・ダグラス・ラミス著 集英社 2009年
実はあのガンジーには、インド建国の際、政治抗争によって揉み消された幻の憲法草案があった…。著者は、その忘れられた「危険な」憲法構想の中に、人類の未来の可能性を見出します。中でも、主権国家を前提にした近代の政治原理ではまったく非常識だと思われたガンジーの構想、つまりインドの70万の村々が独立した共和国になるべきだという彼の徹底した分権思想は、今ではむしろ新しい響きをもって私たちに迫ってきます。
『地に呪われたる者』
- フランツ・ファノン著 みすず書房 1996年
ファノンが再読されるべき時代が、またやってきました。アルジェリア出身でフランス語を話す精神科医ファノンは、人類史の最大の桎梏である《植民地主義》を、まさに自分の中にある分裂の傷口からつかみ出そうとします。その自己をも内破する《血みどろの思索》こそ、これまで内なる植民地主義を懐胎してきたすべての現代人にとって、もう逃れることのできない課題となっています。私も、何度でも精読したいと思っています…。何よりも、沖縄の存在を重ねつつ。