学生に薦める本 2011年版

佐藤 学(図書館)

『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』(幻冬舎新書)

山本ケイイチ著 幻冬舎 2008年
一流アスリートの証として、「心・技・体」が兼ね備わっていることがあげられます。

「心・技・体」は、「心=精神力」・「技=技術」・「体=体力」を意味しますが、「心=精神力」は、目に見えない一番デリケートな部分で、「技=技術」は、日々鍛錬により身に付けるもの、「体=体力」は、作業や運動を行なう身体の力や病気に対する抵抗力のことを指します。

一番身近な「体=体力」について、仕事と結びつけた一冊を紹介します。

本書のタイトルを見て、筋トレと仕事の関連性に疑問を抱くかもしれませんが、仕事と筋トレは、大きな関連性があると書いてあります。

最初に言っておきますが、「仕事ができる=筋肉をつけること」ではありません。著者は、「仕事ができる=目的をもってつらいトレーニングをすること」との関連性を、経験上のエピソードを交えて書いています。

運動をする目的は、一般的に「痩せたい」、「異性からもてたい」、「健康診断があるから」、「健康を維持したい」などがあげられます。私はこの中のいくつかは当てはまりますが、みなさんはどうでしょうか。

筋トレをしたことがある人は、誰もが感じたことだと思いますが、とにかく筋トレはつらい運動です。そのため、挫折した経験がある人は多いと思います。

挫折しないように、苦にならない程度で筋トレをすれば良いのではと思いがちですが、本書にもあるように、筋力をつけるには筋肉を壊さなければいけなく、負荷のない筋トレは成果がありません。つらいことでも、目的を持って継続して行なうことは、筋トレだけではなく、仕事への成果にも通じているとの内容になっています。

目的によってトレーニング方法は異なり、「痩せたい」、「異性からもてたい」、「健康診断があるから」、「健康を維持したい」など、目的にあったトレーニング方法も紹介されています。若いころに筋トレしたことがある人とない人では、歳をとってからのトレーニング効果に大きく差が出ると書いてありますので、筋トレに興味がある人は、早いうちチャレンジすることを推奨しています。

医学的、科学的な根拠も多少書いてありますが、どちらかと言うと経験上での考察が多く、実用的な内容となっています。
[OPAC]

『心を整える。 : 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』

長谷部誠著 幻冬舎 2011年
次に、「心=精神力」について、サッカーワールドカップ 2010南アフリカ大会で日本代表キャプテンを務めた、長谷部選手の自己啓発書を紹介します。
ポジションはMFですが、みなさんは長谷部選手のプレーをどう思われますか。
本田選手のような力強く、無回転フリーキックのような決定力はありませんし、中村俊輔選手のようなキラーパスもありません。松井選手のようなドリブルで勝負することもなく、闘莉王選手や中澤選手のようにヘディングが強いわけでもありません。長友選手のような豊富な運動量があるのかと言えば、試合中にバテて途中交代させられたくらいです。
試合中の実況でも、長谷部選手の名前は、大きな声で叫ばれる場面はほとんどなかったと記憶しています。
歴代のキャプテンは、カリスマ的な存在であったり、人よりも突出したテクニックを持っていましたが、長谷部選手の良さはどこなのでしょうか。
長谷部選手の良さは、安定したプレーにあります。チーム全体を見渡した安定感のあるプレーにより、チーム全体として攻守のバランスを持続することができます。
更に、プレーだけに留まらず、プロとしての自己管理や監督の戦術理解など、誰もがわかっていてもなかなかできないことを、実行できる精神力にあります。
強靭な精神力を身に付けるにはどうしたら良いか。著者は、鍛えるのではなく、「整える」ことだと表現しています。
本書を読むにつれて、あらためて気付かされたことがあります。
私は、人よりも突出したものは持っていません。みなさんはどうでしょうか。
著者のように、突出したテクニックがなくても、厳しい競争に打ち勝ちレギュラーの座を射止め、しかも代表のキャプテンを務めるくらいの重要な役割を任されることへのヒントが書かれています。
みなさんには、就職活動に入る前にぜひ読んで欲しい。そして、就職活動がうまくいかない時など、心が折れそうになった時に再度読んで欲しい。更に、就職活動が終わった後に読んで欲しいと思います。本書は、それぞれの過程で違った印象を受けると思います。
最初読んだ時は深く感じなかったことが、心が折れそうな時に読んでみると、良いヒントを与えてくれると思います。就職活動を終えた後で読んでみると、共感する部分が多く感じられると思います。
ちなみに、長谷部選手はJリーグ(浦和レッズ)時代に、茶髪でロン毛の時期があったそうです。いかにも日本人的な顔つきで、インタビューに対ししっかりと受け答えする好青年的な印象があったのですが、若き日の茶髪でロン毛姿を見てみたいものです。
[OPAC]