学生に薦める本 2024年版

宇田 隆幸

『ピエタ』

大島真寿美 ポプラ社 2011年

時は18世紀のヴェネツィア共和国、孤児を受け入れる『ピエタ慈善院』に縁のあった娘たちの物語。ピエタ慈善院で音楽の指導をするヴィバルディ(作曲家、ヴァイオリン奏者)の死後、一編の楽譜を探す過程でヴィバルディを取り巻く様々な境遇の女性たちが登場する。
どの女性も生きるための力を持ち、強い意志で問題に挑んでいく姿勢が綴られる。
最後に見つかった楽譜の散文詩の一節に、この物語は収束する。
長文ですが、ぜひその言葉に出会ってください。
女性だけでなく、すべての性別・年齢・境遇の人の心に届きますように。
[OPAC]

『ふしぎな県境 : 歩ける、またげる、愉しめる : カラー版』

西村まさゆき 中央公論新社 2018年
私はドライブも旅行も好きで、今年乗り換えた前の車は7年目の車検を目前に走行距離37万キロに達していました。その間故障もなし、トヨタ車素晴らしいです。
日本全国で訪問したことのない県は鹿児島県だけくらいの旅好きです。
そんな私が“重箱の隅をつつく”この本に目を留めたのは必然かと思います。
“へんてこな県境”は、新潟にもあります。
皆さんにもなじみの飯豊山、その山頂は何県か知っていますか?位置的には新潟県と山形県の間にありますね。
新潟県育ちの方には常識なのかもしれませんが、実は福島県です(標高二〇〇〇メートルの盲腸県境と危険すぎる県境)。
その他、気になる目次を紹介
 店舗内に県境ラインが引かれているショッピングモール
 日本唯一の飛び地の村で水上の県境をまたぐ
 カーナビに県境案内をなんどもさせたかった ←走破済み、酷道のため非推奨

どうですか?読んでみたくなりましたか?行ってみたくなりましたか?
長いコロナ禍での移動制限も終わりました。地図を片手に旅に出てみるのもおススメです。
[OPAC]

『六条御息所 源氏がたり』上巻

林真理子 小学館 2016年

『六条御息所 源氏がたり』下巻

林真理子 小学館 2016年
今年のNHK大河ドラマのテーマが源氏物語のため、原作を手にしてみようと思った方も多いのではないでしょうか?そして、全54帖にも上る大作であることで読むのをあきらめてはもったいないです。
多くの作家や学者が現代語訳や解釈の書籍を出版しています。
その中で、林真理子さんは大胆に再構成し、小説として書き上げたのは今回紹介する「源氏がたり」です。
著者である林真理子さん談「『源氏物語』のいちばんいいところのエッセンスをうまく搾り取って組み立て直し、本当に読みやすい『源氏物語』になったと自負しています」」
少し大人な表現もあります。内容は現代の作品が足元にも及ばない多様な恋愛が描かれています。
特筆すべきは、この作品は光源氏の愛人の一人である六条の御息所に一人称で語らせています。
原作を読んだ身として、文体は変われど、光源氏の恋愛に対する奔放過ぎる姿勢には共感しかねますが、古典として長く読まれてきたという評価とこれほどの大作を書き上げた紫式部と林真理子さんに敬意を表して紹介させていただきました。

源氏物語はほかにも
瀬戸内寂聴、角田光代、大和和紀(まんが『あさきゆめみし』)などの作品もあります。
興味のある方は、読みやすい作品を選んでみてください。
[OPAC]
※2024年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)