学生に薦める本 2008年版

小澤 治子

『強権と不安の超大国・ロシア : 旧ソ連諸国から見た「光と影」』

廣瀬陽子著 光文社 2008年
 『強権と不安の超大国・ロシア』などというタイトルの本を学会の大先生が書いたとしたら、正直言って私は見向きもしない。読む前からだいたい内容は想像できる。
 ただこの本は違う。著者は1972年生まれ、新進気鋭の女性の旧ソ連研究者である。彼女は2000年から2001年にかけて、旧ソ連構成共和国アゼルバイジャンの首都・バクーで現地研究を行った。その時の調査を中心に旧ソ連諸国が抱える問題点、ロシアの現状、ロシアと旧ソ連諸国の関係、日本は旧ソ連にどう向き合うべきかなどについて自身の生々しい体験を踏まえてまとめたのがこの本なのだ。
 アゼルバイジャンといってもピンとこない日本人がほとんどで、中にはアルジェリアと間違えてアフリカの国だと思う人も多いという。でもカスピ海沿岸に位置し、イランと国境を接するこの国は、今日、アメリカのミサイル防衛をめぐっても、原油の輸送ルートをめぐっても国際政治の焦点になってきている。アゼルバイジャンから世界が見える、といっても言い過ぎではない。
 とはいっても、ロシアをめぐる記述には同意しかねる部分もある。また国境越えの危ない体験談には読むだけで冷や汗が出る。現場主義の地域研究には時にはそれも必要なのだろう。著者の体当たりの研究成果に拍手!

 
[OPAC]