学生に薦める本 2019年版

藤本 直生

『フジモト先生のビューティフル★アメリカ~Some Stories in Missouri~

藤本直生 銀河書房 1995年

 この本は今から約20年以上前、私が長野県の中学校に勤めていた時に教え子のために書いた本です。本校の派遣留学先である University of Central Missouri は、アメリカの中西部ミズーリ州にありますが、そこは長野県と姉妹州でもあります。そのような関係で、私は1992年の夏に派遣団の一員として3週間ほど、ミズーリ州でホームステイする機会に恵まれました。本書は、私にとって初めて海外で体験した楽しいことや大変だったことを赤裸々に書きました。これからアメリカへの派遣留学を考えている人にお薦めの1冊です。
[OPAC]

『百年泥』

石井遊佳 新潮社 2018年
 主人公は、インドのチェンナイにある企業で日本語教師として働く女性です。ある日、100年に一度の洪水に見舞われて、アダイヤール川が氾濫して川底の100年分の泥が流失し、その泥の中から亡くなった人や思い出の品が次々と現われて、記憶がよみがえって来ます。企業で働く管理職たちは、翼をつけて空を飛んで通勤するなど、近未来の世界を見るような光景もあり、過去、現在、未来が入り混じったような混沌とした内容の話です。英語教員の私がとても親しみを感じたのは、教室における日本語教師の主人公と20代前半の男子学生たちとのやり取りです。そこから、お見合い結婚が多いことや親子関係などを垣間見ることが出来、インドの文化を知るいい機会になりました。
[OPAC]

『Masato』

岩城けい 集英社 2015年
 この本の主人公は、お父さんの仕事の関係で家族揃ってオーストラリアに住むことになった、Masato Andoという12歳の日本人少年です。現地の小学校に転入して、オーストラリア人のクラスメートにいじめられたり、からかわれたりする日々が続いていましたが、大好きなサッカーをするようになってから次第に仲のいい友達も出来て来て、Mattというニックネームで呼ばれるまでになりました。しかし、そんなMasato とは違って、お母さんはなかなか現地での生活に馴染めませず、家では息子につらく当たったり、夫婦喧嘩が絶えないようになりました。Ando一家はどうなるのでしょうか?続きは、ぜひ読んでみて下さいね。
[OPAC]

『女性を活用する国、しない国』

竹信三恵子 岩波書店 2016年
 この本は、以前に勤めていた長野県の大学で、ジェンダーについて研究している同僚に薦められて読みました。日本では「男女雇用機会均等法」や「男女共同参画社会基本法」など、男女平等を定めた法律が整っていますが、実際は女性が活かされない社会であるといいます。国連開発計画(UNDP)では、女性の活躍度を見るために「ジェンダー・エンパワーメント指数」(GEM=Gender Empowerment Measure)のランキングを発表していますが、日本は109ヶ国中57位で真ん中よりも下だそうです。このランキングで上位の国は、女性の国会議員や管理職の比率が高く、男女の所得格差が少ないということで、スウェーデン、オランダ、オーストラリアなど欧米の国々が多いですが、驚いたことに日本はホンジェラスやベネズエラなど中南米の国々より低いのです。
 スウェーデンでは女性を職場で活用することによって、女性が税や年金を負担できる働き手となり、税収が増えて福祉を充実させるという好循環を生み出しました。著者の竹信さんは、日本ではどうしたら真の男女平等を実現できるか分かりやすく解説していますので、ぜひ読んでみて下さい。
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『学校が教えないほんとうの政治の話』

斎藤美奈子 ちくまプリマー新書 2016年
 この本は、以前に勤めていた長野県の大学の同僚に薦められて読みました。最近は若者が政治に関心がなく、選挙に行かないことを嘆く声が聞かれます。事実、20代の若者の投票率は約30%といわれていて、3人に2人は選挙に行かないそうです。著者の齋藤美奈子さんは、そのような若者に向けて本書を書きました。齋藤さんによると若者の政治離れの理由を野球でたとえると、「ひいきのチーム」がないからだといいます。その原因は、学校で特定の政党を応援するような教育ができないため、学生が政治に興味が持てなくなるのだそうです。そのためには、自分のホームを見つけることが必要だといいます。むずかしい政治の話を分かりやすく解説した本なので、大学生の皆さんに一押しの一冊です。
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『Notting Hill』(DVD)

ロジャー・ミッチェル ユニバーサル 2013年
 この映画は、1999年に私がイギリスへ留学していた時、コーチェスターという小さな町の映画館で観ました。主人公はロンドンのノッテングヒルで書店を営むさえない男性ですが、ある日アメリカ人ハリウッド・スターのアナが現われて、彼の人生が一変しました。アナは平凡なイギリス人男性のタッカーと恋に落ちますが、当時独身だった私は、イギリスで恋に落ちたらどうなるかしら・・・と思いながら映画を観ていました。そしたら、何と私もアナと同じように恋に落ちて、3年後の2002年には大学院の同級生だったイギリス人男性と結婚しました!ノッテングヒルは私とって、とても思い出深い映画です。
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『Notting Hill』

Richard Curtis Penguin Readers 2005年
 1999年にリリースされた映画、【ノッテングヒル】が小説になったものです。ロンドンで書店を営むさえないイギリス人男性と、アメリカ人ハリウッドスターのアナとのやり取りにドキドキしながら、映画と同じように楽しめますので、ぜひ読んでみて下さい。
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『The Story of THE HULA』

Rob Waring Thomson Heinle 2008年
 この本は、前任校の新潟県立大学のセルフ・アクセス・センターで初めて読みました。学生たちをハワイ大学マノア校に引率した時、ハワイアンの先生からフラダンスのレッスンを受けたことがきっかけで、フラに興味を持ちました。ハワイ語で【フラ】とは「フラダンス」を意味しますが、とても悲しい歴史があります。フラはハワイの人たちにとって昔からなくてはならないものでしたが、19世紀にヨーロッパ人がやって来てフラを見て驚き、その踊りを禁止してしまいました。そして60年もの間、フラを公共の場で踊ることは出来ませんでしたが、今ではハワイの文化が見直されて、多くの人たちに楽しまれるようになりました。実は、私もフラを習っているんですよ。
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『Holes』

Louis Sachar Yearling Newbery 2000年
 この本は、前任校の新潟県立大学のセルフ・アクセス・センターで初めて読みました。主人公のスタンリーは、プロ・バスケットボール選手のシューズを盗んだという虚偽の罪を着せられて、少年院に送られます。その施設は砂漠のど真ん中にあって、脱獄したとしても生きては帰れないという過酷な環境で、毎日スコップで穴を掘り続けるという日々を過ごしていました。そのような中、スタンリーはグループの仲間の一人と脱獄を試みます。スタンリーたちの脱獄は成功するのでしょうか。エンディングには、想像を絶するどんでん返しが起こります。ぜひ、皆さんもハラハラ、ドキドキのスリルを味わってみて下さい。
[OPAC]

『The Giver』

Lois Lowry Houghton Mifflin Harcourt 1993年
 この本は本校と提携校の関係にある、アメリカのセントラル・ミズーリ大学の先生に薦められて読みました。主人公のジョナスは、家族や職業などすべてが管理されたコミュニティで生活する少年です。この社会では、自分で結婚相手を探したり将来の職業を決めることはなく、すべてをElder と呼ばれる長老たちが決めて運営しています。しかし、12歳になると子供たちには一人ひとりその子にあった職業が、「12歳の儀式」というセレモニーで決められます。ジョナスはその日、「Receiver」という特別な職に任命されますが、この日を境に彼の人生の価値観が180度転換します。続きは、ぜひ本を読んでみて下さいね。
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