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学生に薦める本 2022年版
佐々木 寛
去年はどんどんと“クソ”になっていく世の中でどう生き延びるのかというテーマでしたが、今年は実際に戦争までが起こり、ますますひどい世界になっているので、それについて考えるための6冊を紹介します。
『戦争と権力』
- ポール・Q・ハースト(佐々木寛訳) 岩波書店 2009年
プーチン政権は最新鋭の兵器でウクライナに侵攻しましたが、戦争の本質は変わりません。現在のリベラルな国際秩序がいかに生まれ、そしてどんな理由から変容を余儀なくされるのか、長い歴史の眼で戦争と政治との関係を学び直せる本です。
『新しい国境 新しい地政学』
- クラウズ・ドッズ(町田敦夫訳) 東洋経済新報社 2021年
「地政学(geopolitics)」って、知っていますか? 国境の役割を重視する19世紀からの学問ですが、その視点が近年再び有効性を増しています。国境をめぐって展開する、気候変動やサイバー空間、感染症などをめぐる新しい紛争のリアルについて考えさせられます。
『戦争は女の顔をしていない』
- スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(三浦みどり訳) 岩波現代文庫 2016年
戦争を見る時、地政学のような「鳥の眼」だけではなく、実際に戦う人間たちの眼からも見なければなりません。私も大好きなウクライナのノーベル文学賞作家が、第二次大戦に駆り出されたソ連の女性兵士たちの肉声の中から戦争の本質を浮かび上がらせます。
『敵の顔――憎悪と戦争の心理学』
- サムキーン(佐藤卓己他訳) 柏書房 1994年
侵略し、民衆を殺戮したプーチン政権は、攻め込んだウクライナの政権を悪魔のように喧伝していました。「敵の顔」は、いつでも歪んでいます。殺戮の前には、かならずそれを正当化するためのイメージの戦争があります。陥りがちな戦争心理を学んでおきましょう。