学生に薦める本 2022年版

藤本 直生

『フジモト先生のビューティフル★アメリカ
~Some Stories in Missouri~』

藤本直生 銀河書房 1995年
 この本は今から30年前、私が長野県の中学校に勤めていた時に教え子のために書いた本です。本校の派遣留学先である University of Central Missouri は、アメリカの中西部ミズーリ州にありますが、そこは長野県と姉妹州でもあります。そのような関係で、私は1992年の夏に派遣団の一員として3週間ほど、ミズーリ州でホームステイする機会に恵まれました。本書は、私にとって初めて海外で体験した楽しいことや大変だったことを赤裸々に書きました。これからアメリカへの派遣留学を考えている人にお薦めの1冊です。
[OPAC]

『TOEIC L&Rテスト直前の技術』

ロバート・ヒルキ, ポール・ワーデン, ヒロ前田 アルク 2019年
 数年前にTOEIC で満点(990点)を取った、本校に勤務する非常勤講師の先生に薦められて、この問題集で勉強しました。その後TOEIC を受験したら、何と100点近くアップし驚きました!TOEIC で点数を上げたい人に、一押しの問題集です。
[OPAC]

『おしん』(DVD)

冨樫森監督 Toei Company 2014年
 昨年、2021年4月に脚本家の橋田寿賀子さんがお亡くなりになったことから、約40年前に放映された彼女の代表作、「おしん」が再び注目を浴びています。
 1999年の夏、私はイギリスに留学してエセクス大学大学院の修士課程で、英語教育について勉強していました。同級生は世界各国から来ていて、その中にイラン人の女性がいました。ある日、彼女から「ねえ、日本には “うしん”っていう女の子がいるかしら?」と聞かれました。「はて、そんな牛のような名前の子がいたかしら?」と思っていると、そばにいた日本人の同級生が「"おしん”のことじゃない?」と気を利かせて言ってくれたお陰で、“うしん” が "おしん” であることが分かりました。
 なんでもイランでは、1983年から1984年に日本で大ヒットした、 NHK連続テレビドラマの「おしん」が大人気なのだそうです。私自身は「おしん」がリアルタイムで放送されていた時、中学生だったために学校へ行く時間と重なっていたので、毎日見ることはできませんでした。しかし、土曜日などにたまに見ることはありましたから、とぎれとぎれではありますが、大まかな話の筋は記憶に残っています。
 海外でも「おしん」が人気であるとは聞いていましたが、このように実際にイギリスで同級生の口から「おしん」についての話が出て来たので、確かにその通りなのだと実感しました。でも、どうしてイランでは “おしん” が "うしん” になってしまったのでしょうか。
 さて、今回紹介するDVDはテレビドラマのオリジナルをリメイクしたものです。そのため配役は違っているものの、テレビに出演していたおしん役の小林綾子さんやお母さん役の泉ピン子さんが、役柄を変えてDVDにも出ていますので、その辺も楽しみながら見てみて下さい。
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『国益を損なう英会話力不足』

(財)東北産業活性化センター編 八朔社 1999年
 この本は、英語教育に関する研究論文を読んでいた時に参考文献に使われているのを見て、興味を持ち手に取って読んでみました。注目すべきは、著者が教育の専門家ではなく、「東北産業活性化センター」という経済界の団体であるという点です。出版されたのが1999年ということで20年以上前の本ですが、本質的な著者の伝えたいメッセージは、今の日本にも充分に通じると思います。
 1996年から1997年にかけてのTOEIC (Test Of English for International Communication) 世界ランキングによると、日本は150位と惨憺たる結果でした。英語ができないことによって受ける経済的な不利益は、計り知れないものがあるといいます。なぜかというと、英語は単なる外国語ではなく、グローバルなビジネスを展開するための「世界共通語」であるからです。そのために、外資系企業に対して地方への進出を働き掛けると、「英語を話せる人材は集められますか」と聞かれるそうです。英語は一部のエリートが使えればいいものではなく、多くの人が話せないと仕事にならないからです。新潟も含めた東北地方はモノづくりが盛んな地域ですが、それに加えて英語のできる人材を育成して、世界各国の企業がビジネスをする上で、不自由のない環境を整える必要があるのです。
 ところで、日本の企業は1980年以降の急激な円高の影響を受けて、人件費の安い東南アジアや中国へ工場を移転したため、国内の製造業が空洞化するという問題が起こっています。事実、日本の企業の「対内投資」という国内への投資額は3兆円弱であるのに対し、「対外投資」という海外への投資額は30兆円以上あり、その差は約10倍にもなります。そのため、国内の雇用を維持するには海外からの投資を呼び込む必要がありますが、そこで問題になるのが「英語力」なのです。近年、日本に進出していた外国の銀行や証券会社が東京からシンガポールに拠点を移したり、アジア開発銀行の本部が東京ではなくマニラに設置されたのは、日本人の英語力のなさが原因の1つだそうです。
 英語教員の一人として、私は語学力と経済がこれほどまで関係していることに驚きました。将来、社会人となる皆さんにもぜひ読んでいただきたい本です。
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『ブッダ』

手塚治虫 潮出版社 2010~2011年
 本校、図書館のコミック・コーナーで見かけて読みました。著者は、【鉄腕アトム】や【ブラック・ジャック】で有名な手塚治虫ですが、私は彼がお釈迦様(ブッダ)の一生を漫画で描いていたとは知りませんでした。ブッダの出身地であるインドには、カースト制度という厳格な身分制度があり、そのために人々は長年差別に苦しんできました。ブッダは釈迦族の王子として生まれ、何不自由ない生活をしていましたが、ある日修行の旅に出る決心をしました。この漫画には、ブッダ本人だけでなく様々な階級の人々が登場し、当時のインドでは身分制度がどれほど人々の人生を左右していたかを物語っています。全12巻の長いシリーズですが、面白いので一気に読めてしまいます。
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『Rebecca』

Daphne du Maurier Penguin Readers 1999年
 本書は、イギリス人の夫に薦められて読みました。著者のダフネ・デュ・モリエはイギリスの作家で、彼女の著書である『レベッカ』と『鳥』が、ヒッチコック監督により映画化されたことでも有名です。
 本書『レベッカ』の時代背景は、1930年代で日本では昭和初期に当たりますが、イギリスにおいても貧富の差や社会階級の違いがはっきりしていた時期です。主人公の「わたし」は、アメリカ人女性の付き人としてモンテカルロに来ていましたが、そこで中年のイギリス貴族マキシム・デ・ウィンターと出会い結婚しました。そして、二人はイギリスにある彼の大邸宅マンダレイで生活することとなりました。
 しかし、マンダレイにはマキシムの前妻レベッカの面影が色濃く残っており、後妻の「わたし」にとっては必ずしも居心地のいい場所ではありませんでした。例えば、その大邸宅を取り仕切る女中頭のダンバース夫人は、1年前に亡くなったレベッカの死後も、彼女の部屋を生前と同じように美しく整えていました。
 ある日、マキシムは「わたし」にマンダレイで以前に行われていた、仮装パーティーを開催しようと持ちかけました。「わたし」はそれに同意し、新しいマンダレイの女主人として、夫や来客を驚かせるようなコスチュームは何にしたらいいかと頭を悩ませていました。そのような折り、ダンバース夫人が邸宅のホールに飾られた、絵画に描かれた女性をモチーフにしたらどうかと提案しました。
 「わたし」はダンバース夫人のアドバイスに従って、絵画の中の女性を真似て白いドレスを着てパーティーに臨みました。ところが、今まで和やかに歓談していた来客は、「わたし」をひと目見ると一斉に話をやめ、辺りに気まずい雰囲気が漂いました。マキシムの顔からは見る見るうちに血の気が引いて、「わたし」にすぐさま着替えるように指示しました。なんと、そのドレスは前妻のレベッカが着たものだったのです。その後、マキシムと「わたし」の関係はどうなるのでしょうか。続きが気になる方は、ぜひこの本を読んでみて下さい。
[OPAC]

『Rebecca』(DVD)

アルフレッド・ヒッチコック監督 Macmillan Heinemann ELT 1940年
 これは、イギリス人作家ダフネ・デュ・モリエの小説、『レベッカ』を映画化したものです。話の流れはだいたい小説に沿っていますが、細かいシーンでちょっと違った部分がありますので、小説と比べながら見たら面白いかと思います。ちなみに、ヒッチコック監督は、同じ作家の小説『鳥』も映画化しています。
[OPAC]

『Stand By Me』(DVD)

ロブ・ライナー監督 ソニー・ピクチャーズエンターテイメント 2001年
 以前に私のゼミの学生が、映画【スタンド・バイ・ミー】を卒業論文のテーマに選んで、主な登場人物である4人の少年の間で交わされる会話を分析しました。私がこの映画を初めて観たのは今から30年以上も前になりますが、当時はそれほど面白い映画だと思いませんでした。しかし、学生の書く卒論を読み指導しているうちに、興味を持つようになりました。この映画は、スティーブン・キングというアメリカ人作家のThe Body という短編小説がもとになっています。よろしかったら、こちらの方も手に取って読んでみて下さい。
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『The Body』

Stephen King Scribner 2018年
 この短編小説は、著者であるスティーブン・キングの少年時代の実話がもとになっています。1987年に、【Stand By Me】というタイトルで映画化されましたが、小説は【The Body】、日本語に訳したら「死体」という薄気味悪いタイトルです。というのも、小学6年生の仲良し4人組は、行方不明になっていた少年が列車にひかれて野ざらしになっているという話を聞きます。その少年の死体を見つけたら、有名になれるということで、4人は冒険に旅立ちます。小学生最後の夏休みの出来事ですが、4人はこの経験を通して成長し、無邪気な少年時代に別れを告げます。
[OPAC]

『Billy Brown, I’ll tell Your Mother』

Bill Brown Orion 2011年
 この本は、昨年2020年の春休みにイギリス人の夫の里帰りに付き添って、ロンドンから北へ特急列車で90分のレスターという彼の故郷に滞在していた際、お義母さんから薦められて読みました。
 当時、新型コロナウイルスの感染拡大のニュースがイギリスのメディアでも報道されていて、豪華客船ダイアモンド・プリンセス号での感染があったため、日本は中国に次いでコロナ感染者が多い国となっていました。夫の親戚は、面と向かっては言わなかったものの、日本から来た私たち夫婦が同じ屋根の下で暮らしていたら、80代のお義母さんがコロナに感染してしまうのではないかと心配していたようでした。ある日、お義母さんが電話で次のように話しているのが聞こえてきました。「あたしゃねえ、第2次世界大戦のさなか、ドイツ軍の爆撃の中でも生き延びたんだよ。コロナくらいでくたばるような軟な人間じゃないよ。」
 この本の著者は、きっと1935年(昭和10年)生まれのお義母さんと同年代なのだと思います。ロンドンの下町で生まれ育ち、1940年代後半から1950年代半ばの戦後をたくましく生き抜いてきた少年 Billyが主人公です。Billy は著者の子供時代の愛称で、彼自身が体験した実話がもとになっています。ある日、空爆を受けて廃墟となった豪邸から、Billyはお金になりそうなものを友達と一緒に探していたところ、偶然にもドイツ軍の不発弾を見つけます。これが爆発したら大変なことです。かといって警察に届け出たりしたら、いったいそこで何をしていたのだと咎められるでしょう。さあ、Billy はどうやってこの難局を切り抜けたでしょうか。続きが気になる方は、ぜひ本を手に取って読んでみて下さい。
 300ページ以上ある分厚いペーパーバックの英語の本ですが、わりと大きな字で、日常会話が中心に書かれていますので、読みやすいかと思います。
[OPAC]