学生に薦める本 2022年版

藤田 美幸

『バンクシー アート・テロリスト』

毛利嘉孝 光文社 2019年
 バンクシーは、昨今、世界中で注目度の高いストリートアーティストです。街中の建物の壁や橋下など、あらゆるところにアートを描き続けています。その正体は明かされず、今では単独ではなくチームで活動しているのでは等と様々な憶測が飛び交い、謎めいたアーティストとして名高いです。
 バンクシーの絵はメッセージ性が込められています。それは「反戦争、反暴力、反資本主義」です。とはいえ、現在では世界各地で展覧会が開催されグッズの販売も盛んです。これは反資本主義と対立していますが、バンクシーのアート作品は行き過ぎた資本主義の弊害について批判しているのだと思います。
 本書の著者は、約20年間、バンクシーの作品集などの翻訳や研究をしています。バンクシーの過去と現在がわかる内容です。
 昨今の行き過ぎた資本主義が生み出した貧富の差や環境破壊が生じるまでの工業生産体制などがあります。この課題解決策のひとつとして、バンクシーは「アート」で社会ムーブメントを引き起こしています。今日、持続可能な社会としてSDG’sの取り組みが世界では盛んではありますが、「アート」でもこのような事ができるのです。誰でも自分にできることが必ずあることでしょう。
 皆さんと一緒に、小さなことから私自身にできることを探してみたいと思います。
[OPAC]

『Casa BRUTUS特別編集 バンクシーとは誰か?【完全版】』

Casa BRUTUS特別編集 マガジンハウス 2021年
 バンクシーについて「バンクシー アート・テロリスト」を推薦いたしましたが、大型サイズのカラーで作品がわかる雑誌をご紹介いたします。
 この雑誌では、作品とその解説がわかりやすく記されています。
 バンクシーが世界で有名になったのは2018年にシュレッダー機で裁断された約25億円の「愛はごみ箱の中に(LOVE IS IN THE BIN)」という作品です。元は「風船と少女(GIRL WITH BALLOON)」でしたが、この事件を機会として作品名も変更されました。
 バンクシーの作品はメッセージ性が込められていますが、その一つに「反資本主義」があります。マーケティングは現在ver.4.0となり、生産者と消費者がともに価値を作り出していき社会的価値、ひいては持続的な社会の実現についても考えるようになってきました。
 かつては大量生産、大量消費でしたが、現在、私たち消費者は「モノ」の価値より「コト」の価値、つまり経験価値や文脈的価値を重視するようになりました。更に、コロナ禍では多くの人が身の回りの「価値」を見つめなおす機会となりました。
 アートではありますが、そのような事を考えながら作品をみると興味深いです。私はバンクシー展で、痛烈な社会批判へのメッセージを受け取り衝撃でした。本や作品集で見るより何十倍も強烈なメッセージでした。「百聞は一見に如かず」です。
 コロナ禍では展覧会へ行くことは難しいかもしれません。そのため、先に予習がてら本書を手に取ってもらえたらと思います。そして、実際の作品に触れた時の衝撃の気持ちを共有できたら嬉しいです。
[OPAC]

『新版 社員をサーフィンに行かせよう――パタゴニア経営のすべて』

イヴォン・シュイナード ダイヤモンド社 2017年
 私が最も尊敬する人は著者のイヴォン・シュイナードです。パタゴニア社の創設者であり本書の著者です。これは高校生の頃から変わりません。様々な面接時にも答えた遠い記憶が残っています。面接官からは「誰ですか?」と聞かれたことも多々ありました。
 パタゴニアは、創設時のシュイナードエキップメント社の時から時代の先を歩み続けています。
 タイトルからわかるように、波がよければ仕事中でもサーフィンへ行ってもよいという企業です。本社はカリフォルニア州の海沿いのベンチュラにあります。「ライフ(人生)」が充実すれば、「ワーク(仕事)」でもおのずと成果が出てきます。非常にワークライフバランスが取れている企業です。また、売り上げの5%を環境保護団体へ寄付しています。
 昨今、SDGs、ワークライフバランス等に注目が集まっていますが、そのようなことを半世紀前から当たり前のようにやっている企業です。最近では、経営戦略的にSDGsやライフワークバランスなどの福利厚生をうたっている企業や組織も多々ありますが、創業時からこのような理念を掲げた企業もあるという参考になるかと思います。ぜひ、パタゴニアの製品を手に取った時や見かけた時には企業理念について思いを馳せてもらえたら嬉しいです。
 長年、スノーボーダーでもある私は、パタゴニア日本支社のプロスタッフの1人として、パタゴニアを愛し製品を愛用しています。約20年前のスノーウェアは、現在、父の防寒着として使われています。今でも、10年、20年前のフリースやダウンウェアを着ています。長く大事に着るということもパタゴニアから教わりました。
[OPAC]

『レスポンシブル・カンパニー』

イヴォン・シュイナード ダイヤモンド社 2012年
 企業の責任とは何でしょう。最近では、 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)も一般的なことばとして社会に浸透しています。企業の中では、木の植樹などCSRに配慮した活動をおこなっているところもあります。
 本書は、「パタゴニア」のブランドで世界中に知られる創業者のイヴォン・シュイナードが創業後、どのように経営しているかについて書いた本です。創業時から当たり前のようにCSRを追求しています。
 パタゴニア社では、製品開発で希求するものは環境の修復に資するものです。環境破壊は人間が存在している以上、止めることができません。それは創設者のイヴォンも理解しています。そのような中で、破壊した環境を修復するために、パタゴニア社では、Tシャツやセーターの素材である綿やウールの農法まで見直しています。また、フリースなどのペットポトルの再生率についてもこだわっています。このような事業を進めるには困難はつきものです。また、製品価格にも反映されてしまいます。
 しかし、これは、イヴォンが選んだ道であり、めぐりめぐって社員や顧客、地域社会、そして自然とよりよい関係が持てる道であると答えています。「パタゴニア」の製品を手に取るときに、この本のことを思い出してもらえたら嬉しいです。
 ところで、THE NORTH FACEの創業者であるダグ・トンプキンス(故人:チリのパタゴニアでカヤック時に転覆事故)は、イヴォンの大親友で、チリ南部のパタゴニアを一緒に登山しました。そして、ダグの奥様のクリスティン・マクディビット・トンプキンスはパタゴニア社のCEOでした。この2人の関係は、映画化され「180°SOUTH」で紹介されています。ご興味があれば、鑑賞ください。自然を愛した2人は、登山後に着心地や使い心地がよい製品を世の中に送り出したのです。
[OPAC]

『News Diet』

ロルフ・ドベリ サンマーク出版 2021年
 本書を読んだときに「まさに、わたしの考えと同じ!」と思いました。
 本書は世界各国で翻訳されています。今や世界中でも溢れる情報の波にもまれており、それに対して何とかしなければと思っている人多いということの証でしょう。
 最近、TVは見なくなってきているとはいえ、手元のスマホからSNSから溢れるばかりの情報、ついつい見てしまいがちです。この見ている時間を1日積算したら何分、何時間になるのでしょうか。残念ながら時間の浪費につながります。人は誰でも平等に24時間しかもっていませんから。しかし、わたしたちは、ついついスマホ見たくなります。
 そこで、わたしが取った作戦は出来る限りスマホでSNSをしないという事です。SNSアプリは、PCで開くことを心掛けています。またメールを見る時間を1日で何回と区切っています。それまではアプリを開きません。返事が遅れるなどの支障はありますが、NEW DIETができています。
 通りすがりの情報より、自分が疑問や仮説を持って探索した情報は自分の知識となっていきます。
 本書を読んで、誰かが、「あなた」でなく、視聴者、閲覧者、スポンサーを意識し操作した情報をダイエットしてみる機会になれたらと思います。
[OPAC]

『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』

アダム・グラント 三笠書房 2014年
 周囲には、「要領がいい人」「ずるい人」がいる場合もあります。自分の成果を横取りしたりするような人です。本書では、そういう人を「TAKER(ティカー)」と呼んでいます。一方で、自分の成果などを差し出す人を「GIVER(ギバー)」と呼んでいます。また、一個人においても場面に応じて「GIVER」や「TAKER」になります。そのような混在している人を「MACHER(マッチャー)」と呼んでいます。
 この3タイプで一番成功する人は「GIVER」です。ところが、所得層の最下層にいる人たちも「GIVER」です。一番成功する「GIVER」になるにはどうしたらよいのでしょうか?本書では、そのヒントが、心理学実験の知見に沿って書かれています。自己犠牲ではなく他者志向性を持つことが重要です。
 世の中、生きていると不条理なことも多々ありますが、TAKERにならないように気をつけ、またTAKERの攻撃にあった時には、悲観せずに他者志向性を持って接していこう、と思える本です。
 余談になります。少し古い映画になりますが、本書を読んで「ペイ・フォワード」を思い出しました。「世界をよりよくするには自分は何をしたらよいのでしょうか?」という先生の問いに、小学生の主人公が、「他人に3つの優しさをほどこす、そして優しくされた人は同じことを繰り返す」ということを考えました。それが数珠つなぎのように拡がっていくものです。(最後はエンターテイメント性をもつ映画なので、悲しすぎるラストでした・・・。)あらためて映画を鑑賞しGIVERになるための原点を思い出すことができました。
[OPAC]

『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』

アンドリュー・スコット, リンダ・グラットン他 東洋経済新報社 2021年
 世界中でベストセラーとなった前作の「LIFE SHIFT」は、日本でも社会現象をもたらしました。
 わたしたちは、100歳まで生き、その人生を豊かなものにする。という決意をもたらしてくれました。現在では、医療も発達し100歳まで生きることも可能になっています。現にわたしの祖父は106歳でこの世を去りました。耳は遠くなりましたが105歳まで元気に過ごしていました。そうなると、学生の皆さんは約80年の人生があります。ただ、長生きするだけでなく健康的に長生きすることが重要です。そのためにはどうしたらよいのか?
 本書は、健康、お金、仕事について示唆してくれます。本書が刊行されたのは、アフターコロナ社会である2021年です。コロナは、わたしたちの生活に大きな変化をもたらしました。この時代を前提として、人生100年を健康的に過ごすヒントが本書にはあります。ヒントのひとつに「探索」という行為があります。これは、「生涯にわたって学び続けること」です。
 学生の皆さんは、「まだ学ぶのー」とうんざりすると思いますが、「学び」は必ず皆さんの人生を豊かにします。今は、手元のスマホで直ぐに情報が入手できます。それは広く浅いものが多いです。本書でいう「探索」とは異なるものです。現在では、海外のベストセラーからの翻訳本の出版も多いです。今ではスマホでも本が読める時代になりました。この機会を活かし、世界中の優れた知見に触れて、自分の人生をより豊かにするための知恵をつけていただけたら嬉しい限りです。様々な本が約1,000-2,000円、図書館で借りれば無料です。その投資で人生がより豊かにできるのですからコスパは良いです。健康な100歳を目指し、一日でも早く実行していただけたらと思います。前作との違いについて比較しながら読むのも面白いと思います。
[OPAC]

『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』

マシュー・サイド ディスカヴァー・トゥエンティワン 2021年
 「多様性は大事」と当たり前のように言われていますが、とても理解が進む本です。
著者の前作に「失敗の科学」があり、とても興味深かったので続編のこちらを手に取りました。
企業や組織でイノベーションを生むのも、課題を解決するのも、多様な視点は重要であり、他者と意見交換を活発にすることで良い方向に向いていきます。
 身近な例として、定員が大人数の大学と少人数の大学があります。
実は、本学のような少人数の大学の学生の方が多様な視点を持つことができるのです。大人数ですと自分と気が合う人の母数が多くなるので、友人たちは自分と似ている考えの人ばかりになります。
 一方で、少人数ですと人数が限られていますので、その中から友人を探さなければいけません。また、グループワークなどをする場合も気が合う人だけで構成するのは人数不足で無理なことがあります。したがって、気が合わなくても一緒に行動したり学んだりしなければいけません。
 そのような事から小規模校は多様性を学ぶ機会となることがあります。話してみたら、案外気が合うことも発見できるかもしれません。そして自分と違う視点で物事をみていることにも驚くかもしれません。
 ぜひ、本書を機会として多様性の視点を持つことの重要性の理解を進めてもらえたらと思います。また大いに本学で友だちをつくり多様な視点をもっていただけたらと思います。
[OPAC]

『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』

スコット・ギャロウェイ 東洋経済新報社 2021年
 「コロナ」この世界中をパンデミックに陥れたウィルスは、わたしたちの生活を一変させました。
大学の授業もオンライン化が進み、PCやスマホで授業を受けるのにも抵抗がなくなりました。「オンラインで〇〇をやりましょう。」「オンラインで〇〇を開催します。」という言葉にも違和感がありません。
コロナがもたらしたのは、市場のスピード性もひとつです。

推薦本から以下を引用します。
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この「数十年分が数週間で起きる」という現象が、いまほとんどの業種で広がっている。
eコマースが定着し始めたのは2000年だ。以来、eコマースは毎年約1パーセントずつ成長してきた。2020年初頭、小売業におけるデジタル取引は約16%にすぎなかった。
パンデミックがアメリカに広がり始めてから8週間後(3月から4月半ば)には、その数字が27%に跳ね上がった。ふたたびもとに戻ることはないだろう。私たちはeコマースの10年分の成長が8週間で起こるのを目の当たりにしたのだ。
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 現在、10年分の成長が8週間で起こるというタイムマシンに乗ったような時代です。
 わたしたちは、否応なしに、このタイムマシンに乗せられています。踏みとどまることなく、進化を受け入れ歩みを進みましょう。
 本書で紹介されている、GAFAと呼ばれるGoogle、Amazon、Facebook(現在は Meta)、Appleは、今後どのような経営戦略を取るのでしょうか?また、ポストコロナ社会である今の時代に、日本でも様々なサービスが創発されていますが、世界の企業やサービスは、どのようなものがあるのでしょうか。この本では、そのような企業やサービスを紹介しています。
 コロナは「空間」を超越する機会をたくさんもたらしました。わたしたちは、日本にいながら世界中にアクセスすることが容易にできます。既に5Gは実現され6Gの実装化が進んでいます。世界がひとつに感じるようになることが、直ぐそこまでやってきました。本書はアメリカの事例をはじめ世界の事例を紹介しています。これからの市場の変化について知ることができる機会となります。
 加えて興味深いのは、これからの大学の運営についてページを割いていることです。著者がニューヨーク大学スターン経営大学院教授であることにも起因しますが・・・。未来の大学像について考える機会となりました。
[OPAC]
※2022年度の推薦本は図書館内のトピックコーナーに配架されています。(一部購入できないものを除く)