学生に薦める本 1996年版

内山鉄二朗

『船乗りサムボディの最後の船旅』上下

ジョン・バース/志村正雄訳 講談社
現代アメリカ文学を代表する作家のSFファンタジー。おかしいと同時におそろしい、 空想的であると同時に現実的、繊細であると同時に猥褻な、面白過ぎて困る多層的な 凄い現代小説。(『文学界』1995年10月号所載 越川芳明氏書評より)

『町でいちばんの美女』 

チャールズ・ブコウスキー/青野聡訳 新潮社
現代アメリカ作家の短編小説集だが、なまはんかではない。全部で30編、いずれもあっ というまに作品は終わってしまう。しかし、<なにか>をつかんでいる。それでいて、 「このくらいで終わっていいよね」といった感じで、ある種のまじめさへの挑発とも なっている。(『新潮』1994年6月号所載 福間健二氏書評より)

『V』上下

トマス・ピンチョン/三宅卓雄(他)訳 国書刊行会
ジョン・バースと並ぶ現代アメリカ文学を代表する作家だが、実人生は謎に包まれて いる。彼の小説も謎だらけである。主人公は謎の女Vの正体を追求する。しかし、探 究が進むにつれ、いろんな事件に巻き込まれ、Vの正体はますますわからなくなる。 読者は謎解きを迫られる。(井上謙治氏『アメリカ小説入門』より)

『ライ麦畑でつかまえて』

サリンジャー/野崎孝訳 白水社 1984.5
アメリカ小説の文句なしの近代古典。世代から世代へと読みつがれ、世界各国 に翻訳され、40年経ったが、出版当初と同じように売れ行きを続ける。大人の 世界の<インチキ>なもの、<いやらしいもの>に嫌悪と侮蔑を示すが、みずから の価値観はいまだ確立していない男の子に、まことにすがすがしい<成長物語>。 歯切れのよい文体は、漱石の『坊ちゃん』というところか。(野崎孝氏『ライ 麦畑でつかまえて』解説より)
[OPAC]

『少年時代』上下

ロバート・マキャモン/二宮磬訳 文藝春秋
現代アメリカのホラー小説の大家が<脱ホラー宣言>をして書いた、ノスタルジッ クで、センチメンタルな、男の子の<成長物語>。奇怪な殺人事件を大きな枠組 としながら、男の子がこだわるアイテムをエピソード的に語る。物語のラスト は涙が止まらない。(『文学界』1995年6月号所載 風間賢二氏書評より)

注 (...より)としたのは、諸家の文章をそのまま引用したのではありませんが、 適切な語句をそっくり借用してアレンジしたからです。