学生に薦める本 1996年版

海野 芳郎

 『大君の都 --- 幕末日本滞在記 ---』 上中下

オールコック 岩波文庫 1962年
幕末におけるイギリスの駐日公使としての滞在記である.開国直後の諸問題をめぐる 幕末日本の外交交渉や外国人襲撃事件あるいはハリスに代表されるアメリカの対日政 策に対抗するイギリスの政策等興味ある記述がある.

 『ベルツの日記』 第1部・第2部で数冊

トク・ベルツ編 岩波文庫 1953年
明治9年ドイツ人のベルツは東京医学校教師として来日,教育・診療のほか,公衆衛 生・伝染病予防に尽し,日本の医学発展に貢献した.明治38年帰国.

『古寺巡礼』

和辻哲郎 岩波文庫 1979年
哲学者の和辻はその鋭い美的感覚をもって,日本・中国・インド・欧州の思想史・文 化史的研究にもすぐれた業績をあげたが,本書は大正中期,奈良付近の諸寺に遊んだ 際,飛鳥・奈良の古建築・古美術に対する印象を情熱的に書いたもの.

 『外交官の一生』

石射猪太郎 太平出版社 1972年 (復刻 1986年)
中国各地の総領事として,また外務省東亜局長として軍部の独走に抵抗しながら,戦 争終結への構想を練っていた石射の自由奔放な文章.

『時代の一面』

東郷茂徳 読売新聞社, 原書房 中公文庫 1989年に発行
東条内閣の外相として日米交渉に,また鈴木内閣の外相兼大東亜相として終戦工作に 当る等一貫して和平への尽力を行ったにもかかわらず,A級戦犯として禁錮20年の刑 を受けた.本書は巣鴨拘置所に拘禁中に執筆したもの.