学生に薦める本 1996年版

斎藤 泰則

『コンピュータと認知を理解する -人工知 能の限界と新しい設計理念-』

Winograd, T. and F. Flores. 平賀譲訳 産業図書 1989
著者のWinogradは著名な人工知能研究者であるが、本書では、従来の人工知能研究へ の批判が展開され、言語の理論に基づいたコンピュータシステムの設計理念が展開さ れている。コンピュータシステムと人間との関わりを探るうえで、また人間の行動を 支援するためのコンピュータシステムのあり方を考える上で重要な示唆が得られるで あろう。

『ウィトゲンシュタイン入門』

永井均 筑摩書房 1995
本書では、今世紀を代表する哲学者ウィトゲンシュタインの思索が読みやすくまとめ られている。ウィトゲンシュタインの哲学は言語の論理性を追求した前期の著作と、 言語の公共性を重視した後期の著作に分かれる。この対峙する言語観を通じで、我々 にとって普段、意識することなく使用している言語の奥深さ感じ取れることであろう。

『コンピュータの神話学』

Roszak, Theodore.成定薫、荒井克弘訳 朝日新聞社 1989
「人は情報という言葉が何を意味するのか、またどうして自分が情報をそんなにも欲 しているのかについて明確な考えをもっていないのに、われわれが情報時代のなかで 暮らしているということを安易に認めがちである。」と著者は語る。コンピュータ崇 拝の論調は高まりこそすれ、いまだに衰えることを知らないが、コンピュータのもつ 可能性と限界を冷静に判断し、コンピュータを基盤とする情報社会の問題点を探るう えで様々な視点が得られる著作である。