学生に薦める本 1996年版

槻木公一

ゾウの時間ネズミの時間 --- サイズの生物学

本川達雄 中公新書
動物学者の著書。寿命や行動圏、生息密度とその動物のサイズとの関連性、体重あた りの使用エネルギー量や心臓の鼓動数の累積値はどの動物でも同じであるという意外 な法則の発見、サイズが変化するという島の法則などの専門的な内容を楽しく読ませ、 またヒトという動物を考えさせるベストセラー。

科学と幸福(21世紀問題群ブックス シリーズ7)

佐藤文隆 岩波書店
物理学者の著書。ひと昔前までは国家目標としての科学が、原爆や環境問題でその道 徳性を疑われバッシング状態にある現在、科学は社会との接点を明確にして、シビリ アンコントロールの発想で職業としての科学を拡大すべきと説く。多少難解な箇所も あるが、科学の面白さを正当に伝えたいという著者の気持ちが随所に読みとれる。

システムづくりの人間学

G.M.ワインバーグ 木村泉訳 共立出版
システムづくりという「人間くさい」仕事におけるトラブルや裏話、「経験だよキミ」 といわれる話を、エッセイ風にまとめたもので、訳者の軽妙な言い回しで楽しく読む ことができる。10年ほど昔に書かれたためにちょっと古さを感じるが、今日でも実務 レベルで充分に通じる話も多い。