学生に薦める本 1996年版

正田達夫

『後世への最大遺物』

内村鑑三 岩波文庫
「この美しい地球、この美しい国になにも遺さずには死にたくない、何か記念 物を遺して逝きたい」と、人生の本当の目的について、当時34才の著者が学生 に語った講演の記録。百年も前の講演であり語り口はやや古風であるが、今日 にも妥当する人生論。

『詩のこころを読む』

茨木のり子 岩波ジュニア文庫
「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生 きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてくれます。」 詩人である著者が好きな詩を情熱こめて語っている。どこからでも読めて、表 現はやさしいが、奥が深い。同じ著者に『茨木のり子詩集』思潮社、『自分の 感受性くらい』花神社。

『ヨーロッパのこころ』

犬養道子 岩波新書
ヨーロッパで長く生活した著者が、その歳月を通して考えたこと 得たこと 学 んだことを新書の形にまとめたもの。人間の生き方や考え方は、その土地の長 い歴史や宗教によって形成される。日頃あまり接していないヨーロッパのここ ろを学ぶことができる。

『人間関係』

加藤秀俊 中公新書
人間関係というのは、ふたり以上の人間が互いに理解し、協力しあってゆくた めの方法であり、技術でもある。また、人間関係は個人の成長のための飛躍台 である。生きてゆく上で極めて重要な人間関係と 自己の成長について考える ヒントを提案している。

『パーソナル・アイデンティティのすすめ』

菅原真理子 創元社
女性の公務員としてキャリアーを積み、請われて埼玉県の副知事になった著者 からの働く女性へのアドバイス。世の中の変化について概観し、そのなかで生 き抜く考え方"パーソナル・アイデンティティ"をうみだすきっかけを提案して いる。

『話しことばの科学』

斉藤美津子 サイマル出版会
人間同志の心の触れ合いをもたらすコミュニケーションについて、理論に基づ いた言葉のつかい方を具体的に解説している。興味深いばかりでなくふだんの 生活に大いに役立つ科学的な話し方の指導書である。よい人間関係をつくる話 し方を学ぶことができる。