学生に薦める本 2006年版

小澤 治子

『アフガニスタン 戦乱の現代史』

渡辺光一 岩波新書 2003年
2001年9月に起こったアメリカでの同時多発テロ事件を契機にアフガニスタンは国際社会の注目を集めることとなった。最近日本のマスコミでの取り上げ方は小さくなってしまったが、復興と国作りには今なお大きな課題が残されている。本書は19世紀半ばからイギリスとロシアの狭間で国家形成を行ってきたアフガニスタンが、二度の世界大戦と冷戦期を通じて,まさに「戦乱の十字路」に位置付けられて歩んできた歴史が明らかにされている。本書を読むと、あの同時多発テロ事件の背景が少しわかるかもしれない。
[OPAC]

『ルポ 戦争協力拒否』

吉田敏浩 岩波新書 2005年
イラクへの自衛隊派遣,有事法制の成立。日常生活の中でほとんど意識することはないかもしれないが、日本は着実に「戦争のできる国」へと変容しつつある。その中で市民レベルでの「戦争協力拒否」の動きが進行している。戦争の加害者にも被害者にもならないためにはどうすればよいのか。是非この本を読んで真剣に考えてほしい。
[OPAC]

『憲法九条の戦後史』

田中伸尚 岩波新書 2005年
日本国憲法をめぐり様々な議論が行われている。本書は、憲法九条が政府によって常に「形骸化」の危機に曝される一方、その理念を生かそうとする市民の行動によって、戦後日本の歴史が築きあげられてきたことを明らかにしている。日本や国際社会のあり方を考える上で,是非読んでほしい一冊である。
[OPAC]

『君について行こう(上)女房は宇宙をめざす』
『君について行こう(下)女房と宇宙飛行士たち』

向井万起男 講談社プラスアルファ文庫 1998年
日本初の女性宇宙飛行士として注目を集めた向井千秋さんの夫、万起男さんの著書。
上巻、下巻に分かれている。二人の出会いから結婚,そして千秋さんが夢を実現させて宇宙に向かって飛び立つまでのようすが様々なエピソードを交えて大変興味深く描かれている。宇宙飛行訓練の裏話,乗組員同士の交流など読んでいて飽きない。そして何よりも,『君について行こう』というタイトルが示すように,社会的性差の解消について、互いの生き方を尊重し合う男女の生き方についてなど、いろいろなことを考えさせてくれる本である。
[OPAC]