学生に薦める本 2006年版

プラーソル・アレクサンドル

『巨匠とマルガリータ 上・下』

ミハイル・ブルガーコフ 群像社 2000.3
 名高いロシア作家ブルガーコフ著の傑作「巨匠とマルガリータ」は私の最も好きな作品だ。この小説を初めて読んだのは、学生時代である。それ以来5、6回読み返した。ロシア各地には「巨匠とマルガリータ」のファン・クラブも設置されている。
 作品のマジカルな魅力にひかれた読者は、定期的に集会を開き、登場人物などについて語り合う。本作は2000年にポーランドで、20世紀における世界最高の文学作品として認められた。’05年にはロシアで映画化されたが、この話題作の視聴レーティングは全国で29%、首都モスクワではセンセーショナルな58%に及んだ。
 小説の内容は?――ある日の夕方、モスクワの並木道にやや変な、外国人らしい男が姿を現す。色の違う目をしているし、時としてアクセントの強い、めちゃくちゃなロシア語、時として完璧なロシア語をしゃべる。話の内容も変だ。1804年に亡くなったドイツ哲学者カントとの会見を回想する。話し相手の文学雑誌編集者が、近いうちに珍しい処刑を受けると預言する。「あなたは若い女性によって首をチョン斬られます!このことについて、キエフの叔父に至急に電報でも打ってあげましょうか」と。数分後、引き揚げた編集者は足を滑らせ、路面電車にはねられ首をチョン切られて死んでしまう。この恐ろしい事故は、路面電車の若い女性運転手にショックを与える。予言が見事に実現したことを目撃した詩人は、変な外人を捕まえるよう努力するが、失敗して頭がおかしくなり、精神病院へ運ばれる。
 20世紀前半、悪魔が連れ立ってモスクワを訪れる。市民たちの日常生活にはおかしい、時として恐ろしい出来事が始まるのだ。
[OPAC]