学生に薦める本 2006年版

樋口 光明

『蝶の舌』

マヌエル・リバス 角川書店 2001年
 皆さんはスペインの内戦を知っていますか。この本は、ガルシア地方の小さな町の、グレゴリオ先生と、スズメ少年一家の温かい交流の話です。ただ、あの日までは。
 少年は先生から、ゼンマイのようになっている「蝶の舌」のことや、巣を植物の絵具で飾る鳥「ティロノリンコ」のことなど興味を惹く多くのことを学びます。
 あの日、フランコに率いられた軍隊の蜂起があり、共和派である先生は捕まり連行されます。町の人たちは昨日まであんなに親しかったのに、自分を守るため全員で連行される共和派に罵声を浴びせます。「裏切り者」「犯罪者」「アカ」。
 母親も少年に「あなたも何か言いなさい」といいます。そこで少年が叫んだ言葉は……。短編集だから簡単に読めます。
[OPAC]

『容疑者Xの献身』

東野圭吾 文藝春秋 2005年
ミステリー小説の面白さは、起承転結それぞれのインパクトにある。起:「何かを予感させる出会い」 承:「お決まりのごたごた」 転:「思いもかけない展開」 結:「感動的なラスト」。ミステリーだから内容は書かないが、本の帯に書いてあったキャッチコピーには、「これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった」と書いてある。
[OPAC]

『赤い指』

東野圭吾 講談社 2006年
上記の直木賞受賞作品に続いて書かれたこのミステリーは、99%読み進んでも、意外な展開になりそうにない。しかし主任刑事がいう「大事なのはここから先だ。ある意味、事件より大切なことだ」から始まる最後の20ページは、ミステリーが犯人を捜すだけの小説ではないことを教えてくれる。
[OPAC]