学生に薦める本 2006年版

矢口 裕子

『ヒロインからヒーローへ―女性の自我と表現(新版)』

水田宗子 田畑書店 1992年
 アメリカ文学にしろフェミニズムにしろ、日本人の書くものは欧米(本場?)の最新の流行を口移しに伝えたり、チャート式に整理整頓して講釈したり、リアリティないなぁと思っていたわたしの眼からうろこを落としてくれた一冊。日本フェミニズム文学批評の嚆矢といえるでしょう。

『どうにもとまらない歌謡曲―七〇年代のジェンダー』

舌津智之 晶文社 2002.11
 気鋭のアメリカ文学者である著者が、松本隆の手になる歌謡曲の歌詞に自らのジェンダー的齟齬・異和感を慰謝され励まされた軟弱な過去を告白しつつ語る、日本ジェンダー批評研究最新の成果。
[OPAC]

『アナイス・ニンの日記 1931~34-ヘンリー・ミラーとパリで』

アナイス・ニン 筑摩書房 1991年

『ヘンリー&ジューン』

アナイス・ニン 角川書店 1990年

『アナイス・ニン コレクション 1』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年

『アナイス・ニン コレクション 2』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年

『アナイス・ニン コレクション 3』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年

『アナイス・ニン コレクション 4』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年

『アナイス・ニン コレクション 5』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年

『アナイス・ニン コレクション 別巻』

アナイス・ニン 鳥影社 1993-1997年
 わたしがこの業界に足を踏み入れるきっかけをつくった罪つくりな人。今こそ再読・再評価が望まれる作家。「女として書く」という彼女のことばの意味は何か?
[OPAC]
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『アメリカ文学のレッスン』

柴田元幸 講談社 2000年
 昨年『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞を受賞した自称「生半可な学者」、他称「翻訳の天才」による、生半可ならぬアメリカ文学への誘い。
 新書なので値段とページ数は軽量、語り口も軽妙だが、「名前」「食べる」「幽霊の正体」といったキーワードのもとに、アメリカ文学の古典から現代作品までが縦横に論じられ、引用はすべて柴田訳という、1冊で2度おいしい贅沢な仕上がり。「翻訳は自己消去」が著者の持論だが、ここにはまぎれもない柴田ヴォイスが響く。
 「ハックがハックでなくなることによって成立」する『ハックルベリー・フィンの冒険』から語り始め、「世界は翻訳だ」と言い切るリチャード・パワーズを引いて、アメリカ文学の「消費」にとどまらない新しい「翻訳」法のレッスンを、と語り終える本書は、みごとに自己言及的であり、日本のアメリカ文学研究への批評ともなっている。
[OPAC]

『日々の非常口』

ビナード,アーサー 朝日新聞社 2006年
日本語の詩集『釣り上げては』(思潮社)で第6回中原中也賞を受賞した、アメリカはミシガン州出身の詩人によるエッセイ集。20歳を過ぎてから日本語を学び始めたとは信じ難い抜群の日本語(とユーモア)のセンス。しかもハンサム!驚嘆するしかない!!
[OPAC]