学生に薦める本 2013年版

藤瀬 武彦

『エリ-トの条件 - 世界の学校・教育最新事情 学研新書 』

河添 恵子【著】 学研マ-ケティング

『オリンピック物語 - 古代ギリシャから現代まで 中公新書ラクレ 』

結城 和香子【著】 中央公論新社

『オリンピックのすべて - 古代の理想から現代の諸問題まで』

パリー,ジム/ギルギノフ,ヴァシル【著】 舛本 直文【訳・著】 大修館書店

『オリンピックと平和 - 課題と方法 広島経済大学研究双書 』

内海 和雄【著】 不昧堂出版
日本では「エリート」といえば、一般に偏差値の高い「T大学」や「医学部」などの学生や卒業生等のことを多くの人が思い浮かべると思います。つまり、記憶力が良くて知識が豊富な人のことをいうのではないでしょうか(日本の教育は暗記型・知識重視)。しかし、本当にそうでしょうか。例えば、天皇陛下の心臓手術を手がけた執刀医の天野教授はある私立大学医学部を3浪した方でしたし、ノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授は研修医時代には使い物にならなくて「邪魔なか」と呼ばれていたそうです。このお二人は大きな挫折を経験しながらも血のにじむような努力によって人類のために世界的な業績を挙げられていますが、私は人格的にも日本が世界に誇る真のエリートだと尊敬しています。
  ちなみに欧米では「エリートとは何?」と尋ねても「名門大学の学生や卒業生」という返事は返ってこなくて、「奉仕の精神と倫理観、文武両道で自律心と社会性を兼ね備えた人材」、「ミッション(使命)、ビジョン(展望)、パッション(熱意)を持っていること」、「人格に優れ、・・・、スポーツもでき、リーダーシップもあること」がエリートの条件との回答が紹介されています。つまり、概ねあの「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige:高貴なる者に伴う義務、つまり奉仕の精神)」の意味を含んでいます(日本ではどうだろうか?)。また、ある名門校での教育の三本柱は「マインド」「ボディ」「スピリット」であり、それらを養成するために文武両道が基本という考えがあるそうです。しかし日本だったら「スポーツなんかやっている暇があったら勉強(暗記?)しなさい」と言われそうですね。私は日本には公正で信頼できる強いエリート(リーダー)が極めて少ないと感じますが、皆さんはどうお考えでしょうか。
  一方、日本で真のエリートやリーダーが育たない理由の一つとして教育環境の問題が挙げられています。子どもの成長過程の中で「国家を意識し、国民として自覚を持つ機会が少ない。世界の多くの国では国旗掲揚、国歌斉唱を行う学校での朝礼をはじめ、・・・国家的イベントなどによって愛国心を培い、国民としての意識を育んでいる(国旗掲揚、国歌斉唱は戦争への誘発ではなく、平和な世の中を祈願するための儀式として存在)」ということも述べられています。いろいろと反論も賛同もあるかもしれませんが、私は学生の皆さんに将来は地域・社会のリーダーやエリートになってほしいと思っていますので、是非この本を読んで残りの学生生活の参考にしてください。

 あとオリンピック関連書籍については、今年(2013年)の9月に2020年のオリンピック開催地が決定しますが、おそらく日本(東京)は厳しい状況におかれていると思います。東京都民の招致支持率が昨年は47%でしたが(現在は何とか70%を超えている)、ここまで低い支持率は極めて稀有なことでした。いつからどういう理由で日本人(東京都民)はオリンピックが嫌いになったのでしょうか。
  以前私のゼミでは「オリンピックに関する知識と招致支持率との関係」について卒業論文を書いた学生がいました。その結果は知識量が多い(少ない)ほど支持率が高い(低い)という傾向にありました。この理由については様々なことが考えられますが、私はオリンピックの表面的なことだけではなく、理念や歴史なども含めてオリンピックのことをもっと知ってもらえれば人類にとっていかに有益なイベント(問題点もありますが)であるかが少しは分かってもらえるような気がします。体育やスポーツが嫌いな学生にも是非一度は目を通してもらいたいと思っています。
[OPAC]
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