学生に薦める本 2012年版

安藤 潤

『 ドイツ料理万歳! 』平凡社新書

川口マーン惠実著 平凡社 2009.7
ドイツ料理は華やかさやおしゃれという点でフランス料理、イタリア料理、スペイン料理にはかなわないかもしれない。巻頭カラーで紹介されているアイスバインやシュバイネハクセのように、事実、レストランで出てくる料理は盛り付けや飾りつけに派手さはなく、肉の塊がドカーンというパターンが多い。ドイツ料理と言えばソーセージにビールというのが多くの日本人がもつイメージだろうが、実際には魚介類も食べるし、ワインも良く飲む。そんな飾り気のないドイツ料理を紹介してくれるのがこの本。アルト、ケルシュ、ドルトムンター、ピルス、ボック、ヴァイス、ヘフェ・ヴァイツェン・・・。ドイツでは「ビールは飲むパン」と言われるが、4か月の滞在中、本当にたくさんの種類の「パン」を飲んだ。何せ水より安いのだから。日本人Jリーガーがニュルンベルグに移籍するそうだが、どうせ現地まで観戦しに行くのならブラート・ヴルスト・ホイスレというお店で焼きソーセージのニュルンベルガーを食べつつ「パン」を飲んでもらいたい。
[OPAC]

『稼ぐ妻・育てる夫 夫婦の戦略的役割交換』

治部れんげ著 勁草書房 2009.4
夫婦の家事労働分担を研究して5年以上が経過しただろうか。しばしば指摘されるように日本人の夫は世界的にもまれなくらいに家事をしない。「似ている」と言われるドイツ人でさえもう少し家事をしている。アメリカ人の夫も大したことは言えないが、American Time Use SurveyやNational Survey of Families and Householdsの平均値を見る限り日本人の夫よりは家事を担うようだ。少なくともスーパーの買い物をしている既婚者と思われる男性は日本やドイツでよりもアメリカでの方が圧倒的に多かった。この本は著者が1年間ミシガン大学女性教育センターに客員研究員として滞在中に行った52名のアメリカ人を対象にしたインタビュー調査をもとに書かれたアメリカの共働き夫婦の家事分担の実際である。日本の経済や社会はアメリカ型になったと言われることもあるが、もしそうであるのなら「どうせなら家事分担まで」と思うのだが。ちなみに日本のパネルデータを用いた最近の研究成果では、働いてお金を稼ぐ共働きの妻は、正規雇用であれ非正規雇用であれ、(おそらく獲得した所得で家事に関連する財・サービスを購入し)自らの家事・育児時間を減らしているだけでなく、夫の家事・育児時間を増やすことが明らかにされている。
[OPAC]