学生に薦める本 2012年版

上西園 武良

『 ヒトゲノムを解読した男 : クレイグ・ベンター自伝』

J・クレイグ・ベンター 著 化学同人 2008.12
米国の政府系研究機関との競争に打ち勝って、世界で初めてヒトゲノム30億塩基対を解明したセレーラ社の研究者であるグレイグ・ベンダーの自伝。

高卒で看護師としてベトナム戦争に従軍。重傷を負って帰国後、大学に入学し研究者となった異色の人。

ヒトゲノム解明の先取権をめぐって不利な民間の立場から政府系の巨大研究所と争い、ついには独自解析方法(ショットガン法)によって2000年に1番乗りとなった波乱万丈の物語。少しは聞いていたけれど、こんな熾烈な争いがあったとは知らなかった。同時に、アメリカのダイナミズムを見る思いがした。

日本の大学では考えられないような競争的な研究環境。企業は企業で常に新しいものに投資しようと専門家が新技術・新発見を探している。もとろん金もうけのためだが、これぞと思ったものには巨額の投資をためらわない。日本の企業にはこのたくましさはない。やっぱりアメリカはすごい。
[OPAC]

『誰も知らなかったココ・シャネル』

ハル・ヴォーン 著 文藝春秋 2012.8
原題は"Sleeping with THE ENEMY"と非常に露骨です。いろんな発見があり興味深かったです。ご存知のように、ゴテゴテしたファッションから女性を解放したシャネルですが、香水のシャネルNo.5も画期的だったのです。それまでも香水はありましたが、大量につけないと香りがせず、短時間で香りがなくなってしまうものでした。シャネルが化学者と共同して、少量で長い時間香りが続く、つまり我々が香水と認識している香水を最初に作ったのがシャネルNo.5だったのです。何十もの試作品を作った中の5番目ということでNO.5なんだそうです。
[OPAC]

『エピジェネティクス操られる遺伝子』

リチャード・C.フランシス 著 ダイヤモンド社 2011.12
エピジェネティクスとは後成説のこと。前成説に対比して言う。遺伝子が全てを決定するという現代の前成説は破綻しつつある。遺伝子が主役ではなく、環境や細胞と相互作用しながら働いていて、キャストの一人にしかすぎない。当たり前といえば当たり前のことが色々な研究から明確になりつつあることを教えてくれた。
[OPAC]