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学生に薦める本 2012年版
山下 功
「不惑の群像」
皆さんは、どのようなことで「歳をとった」と感じるだろうか。私の場合、20代の頃よりも明らかに体力が落ちたと感じたことや、年下の有名人が増えてきたことである。暦年や年齢というものは人生の連続的な流れを意図的に区切ったものであるから、40歳になることを人生の節目であるとは特段に思わないが、今年度は私と同じ1972年生まれの人たちによる著作を選んでみた。ちなみに、年始の第146回芥川賞を受賞した円城塔氏と田中慎弥氏も同年生まれである。
『世界おもしろヒコーキ旅』 枻文庫
- チャーリィ・古庄著 枻出版社 2008.9
有名な航空写真家といえば、伊藤久巳氏とルーク・H・オザワ氏が挙げられるだろう。両者の写真にはそれぞれ特徴があり、鉄道写真出身の伊藤氏の写真からは航空機そのもの重量感が伝わってくるのに対して、オザワ氏は航空機を風景にとけ込ませている。そして古庄氏の写真からは、航空機に対する愛情が伝わってくるように感じる。それは、古庄氏が航空業界出身であり、実際に小型機を操縦するパイロットであることに由来するのではないだろうか。
『工場萌え』
- 石井哲(写真), 大山顕(文) 東京書籍 2007.3
大山氏は「ヤバ景写真家」という奇妙な肩書きを持ち、「住宅都市整理公団総裁」と自称している。「機能美」という言葉があることから分かるように、機能的な人工物に対して趣味的な興味を抱くことは今に始まったことではない。しかしながら、2009年度に紹介した牛山隆信氏の「秘境駅」と同様、「工場鑑賞」や「団地鑑賞」を趣味として体系化したところに意義がある。
『夢はかなう』 幻冬舎文庫
- 高橋尚子著 幻冬舎 2004.7
この年に生まれた有名人はたくさんいるが、国民栄誉賞をもらったのは高橋氏だけである。この本を読んで、日本中を熱狂させたシドニーオリンピックを感じてほしい。
『ケンタロウの「おいしい毎日」』
- ケンタロウ著 講談社 2004.3
この本は、料理本とグルメ本の中間的な感じで書かれているのが特徴である。それは、ケンタロウ氏がイラストレーター兼料理研究家であることによるものであろう。
『ラッキースターの探し方』
- 蜷川実花著 DAI-X出版 2006.7
私は現代芸術をよく鑑賞するが、蜷川氏の写真は理解し難いし、蜷川氏が監督した映画も見たことがない。しかしながら、この本には自立して生きていくためのヒントが書かれているという点で光を放っている。