学生に薦める本 2014年版

藤瀬 武彦

『美しく怒れ (角川oneテーマ21)』

岡本太郎【著】 角川グループパブリッシング

『警察官の現場 : ノンキャリ警察官という生き方 (角川oneテーマ21)』

犀川博正【著】 角川書店
岡本太郎といえば、特に年配の方々は日本の有名な(個性的な?)芸術家、1970年大阪万博の太陽の塔、あるいは彼の「芸術は爆発だ」という流行語などを思い出されるだろうが、私個人的にはスポーツとの関わりの方が印象深い。例えば、彼は1964年の東京オリンピックで選手や役員に渡された参加メダル、1972年の札幌やミュンヘンオリンピックの記念メダル、近鉄バッファローズの帽子のデザインを担当している。また、意外にも熱狂的なスキー愛好家であり、生前親交のあった三浦雄一郎氏(プロスキーヤー、80歳でエベレスト登頂成功)を「彼は自分の一番弟子であった」というくらいスキーに対する熱意も腕前も凄かったらしい。
そんな彼が「美しく怒れ」という本を書いており、ページをめくってみると「はじめから憤りなどといささかショッキングだが。・・・怒るべきときに怒らないことによって、妥協し、堕落している一般的なずるさと倦怠が腹立たしい。世の中が怒りを失っていることに、憤りを感じるのだ。」というような文章が続く。まさに毎日朝から夜まで怒りが込み上げてくることの多い私の気持ちに近い内容が多数書かれていた。例えば私の場合は、ニュースを見て「消費税を上げる前に、なぜ税金垂れ流しである天下りや談合を根絶しないのか、なぜ政治家が自ら議員報酬や定数を削減しないのか」、通勤の時に「田んぼのど真ん中の一直線道路なのに、なぜ制限速度が時速40kmなのか、なぜ警察は安全な道路に限って隠れて取り締まるのか」など挙げたら切りがない。
ここで思いだすのが、元警察官であった犀川氏の「警察官の現場」という本である。この本の中ほどに「そもそも日本という国は、全てのドライバーを「犯罪者」にする前提で交通規制をしているのです。みんなが速度違反をしないと走れない、制限速度を守っていると流れに乗れず、逆に危険・・・。」との記述があった。そういう状況で、警察は(交通安全ではなく)ノルマを達成するために取り締まりを行っている実態が他の本にも多数書かれている。やはり、岡本氏の言うように日本人は「怒るなんて大人げない、非道徳」と思っているので、日本の社会には国民にとって理不尽極まりないことが多々まかり通っているのではないだろうか。だから、もっともっと日本人は(美しく?)怒るべきである、そして特に学生には(より良い社会をつくるために)選挙に必ず行くべきである、と私は言いたい。
[OPAC]
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『TOKYOオリンピック物語』

野地秩嘉【著】 小学館

『日本人はなぜ日本のことを知らないのか (PHP新書)』

竹田恒泰【著】 PHP研究所
昨年9月に大方の予想を覆して2020年東京オリンピック(とパラリンピック)の開催が決定した。このことについて多くの賛否(特に否に対して)があるようだが、好き嫌いや主観・観念を抜きにして客観的に公平な立場で「オリンピック」を見つめてもらいたいと思い、今回は「TOKYOオリンピック物語」を推薦した。1964年の東京オリンピックが東京都民に日本国民に何をもたらしたのかを感じていただければ幸いである。
一方、竹田恒泰氏は「明治天皇の玄孫」で有名(?)だが、私個人的には彼の祖父(明治天皇の孫、昭和天皇の従兄)は日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒徳氏であり、彼の父親は現JOC会長の竹田恒和氏であることの方が印象深い。最近、彼のオリンピック選手に対する発言(敗北した選手が楽しかったとは何事、メダリストはメダルを噛むな、など)がバッシングを受けているようだが、彼の生い立ちや環境を考えたらそういう発言は当然だと思うし、私は本質的にも彼に賛同できる。そんな彼の著書の内容についても非常に賛同できるものである。英語ができれば(しゃべれれば)国際人であると勘違いしている人々が多いようだが、藤原正彦氏(国家の品格の著者)が言うように、国際的に通用する人間になるにはまず「国語」を徹底的にマスターすべきであるし、基本的な「日本の歴史」を知るべきであると思う。つまり、学生には在学中に外国語や異文化理解、あるいは情報技術などを学ぶと同時に、是非とも日本のことももっと学んでほしいという気持ちから竹田氏の本を推薦した。
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