学生に薦める本 2014年版

山下 功

「技術大国であり続けるために」
身の回りから日本製の物が少なくなってきたことや、海外企業の情報サービスが世の中に広まっている状況を見て、「日本の製造業は衰退した」とか「日本は技術大国の座から降りた」などと思っている人も多いかもしれない。ところが、海外の工場の生産現場に目を向けてみると、そこで動いている機械装置の多くが日本製である。また、メカトロニクスやハイブリッド自動車のような複数の分野が融合した技術や、宅配便のような高レベルのサービスは、日本が得意とするところである。昨年度から映像作品も選べるようになったため、NHKで放送された番組と関連づけながら、過年度に薦めた本を中心に5冊を選んだ。これらの資料を通して「自分が生まれあるいは育った日本という国はまだまだ捨てたものではない」と感じてほしい。

『子旅人をつなぐ“マルスシステム”開発ストーリー』

金子則彦【著】 アイテック 情報処理技術者教育センター

『100万座席への苦闘 : みどりの窓口・世界初鉄道システム』

『旅人をつなぐ“マルスシステム”開発ストーリー』に関連する映像(2004年4月6日放送)
1960~70年代の国鉄を舞台にした、大規模な座席予約システムの開発プロジェクトの実録である。今では当たり前になったサービスを裏で支える情報システムを垣間見ることができる。
[OPAC]
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『クロネコヤマトの宅急便“NEKOシステム”開発ストーリー』

石橋曜子, 高尾恭介【著】 アイテック 情報処理技術者教育センター

『腕と度胸のトラック便: 翌日宅配・物流革命が始まった』

『クロネコヤマトの宅急便“NEKOシステム”開発ストーリー』に関連する映像(2001年5月29日放送)
インターネットの通信販売で注文をすると、翌日に品物が届けられる。なぜ、このようなことが実現できるかというと、日本が平和で豊かであるとともに、荷物を効率的に輸送する仕組み(システム)が構築されているからである。
[OPAC]
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『新装版 計算機屋かく戦えり』

遠藤諭【著】 アスキー

『国産コンピューターゼロからの大逆転: 日本技術界伝説のドラマ』

『新装版 計算機屋かく戦えり』I章「FACOM100」に関連する映像(2002年4月9日放送)
戦前から戦中・戦後にかけて、計算機の研究開発に携わったた技術者やその関係者へのインタビューを収録したものである。技術立国が昔も今も重要であることを再認識することができよう。
[OPAC]
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『チップに賭けた男たち』

ボブ・ジョンストン【著】安原和見【訳】 講談社

『液晶 執念の対決 ~瀬戸際のリーダー・大勝負~』

『チップに賭けた男たち』第3章、『新装版 計算機屋かく戦えり』VI章「トランジスタ式電卓CS-10A」に関連する映像(2001年4月17日放送)
トランジスタ、IC、発光ダイオードなどの半導体分野を中心に顕著な成果を挙げた無名の日本人技術者たちを追ったドキュメンタリーである。短期的視点が故に革新的な研究開発成果を事業化に結びつけることができなかった米国の巨大企業、大学での研究成果を活かすことができる企業がなかった英国、米英では使い物にならないと思われていた技術を追究して事業化に成功した日本企業。この三者の対比を読み取ってほしい。
[OPAC]
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『ぼくは「つばめ」のデザイナー 九州新幹線800系誕生物語』

水戸岡鋭治【著】 講談社

『デザイナー 水戸岡鋭治の仕事: 列車は、走るビックリ箱』

『ぼくは「つばめ」のデザイナー』に関連する映像(2011年4月4日放送)
国鉄がJRになった頃から、鉄道車両が産業デザインの対象として注目を浴びるようになった。水戸岡氏の鉄道車両の特徴の一つが「地元産の材料を使用する」ことであり、内装が木製であるものが多い。「難燃性の基準を満たす」という制約条件の中で、敢えて木を使用する。これは、芸術であると同時に、まさしく技術が活用されているのである。
[OPAC]
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