学生に薦める本 2018年版

熊谷 卓

『Men Without Women: Stories』

HarukiMurakami(著) PhilipGabriel(翻訳) TedGoossen(翻訳) Knopf 2017年
 卒業生に話を聞くと、異口同音に職場で英語を使用する機会が頻繁にあるということです。海外の取引先からとの通信(メールや電話を含む)から始まり、取引先への訪問や受け入れなど、思ってもみなかったぐらいそのような機会に遭遇するということのようです。
かくいうわたしも、仕事の関係上、英語を使用しなければなりません。読む、話す、書く、いずれにおいても難儀しております。それを克服する方法としては、昨年度版にも書きましたが、元々が日本語で書かれた「本」(小説でもエッセイでもOK)の翻訳ヴァージョンを読むという作業を薦めます。文化や社会的背景についての一定の既視感をふまえて読むことができるので、仮に不明確な単語や言い回しに直面しても、類推が効き、途中で投げ出すことなく読み切ることができます。一点付け加えると、日本語の原書についてはできれば後に読んでください。その方が面白いと思います。
 で、そのような視点に立って、お勧めするのが、村上春樹の一連の作品(容易に英訳を手に入れることが可能)ですが、今年は最近公刊された上記の短編集を紹介します。短編の良さの1つは、「読み切れる」ことでしょうかね。
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『ひとを“嫌う”ということ』(角川文庫)

中島義道(著) 角川書店 2003年
 学生だった人(卒業生)が研究室に遊びに来てくれることがたまにあります(とても嬉しいことです)。そのような折、卒業生が、「会社を辞めたい。なぜなら、人間関係が・・・・・。」「上司に嫌われているので、苦痛だ。辞めたい」「同僚と合わない。好きになれない。」ということで、相談をしてくることもあります。
 人間関係で会社を辞めること、それはおそらくとても多いのではないかと思いますが、そのようなことを考え始めたときに読んでもらいたい本が上記の1冊です。人が複数集まれば、どうしたって、「好き」・「嫌い」という感情が発生します。その「嫌い」という感情を、分析・分類し、「嫌いな人」とどう折り合いをつけるか、どうやり過ごすかということを提示(提案)しているのが本書です。本書を読み、わたし自身もずいぶん気楽になりましたよ。
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『1ミリの後悔もない、はずがない』

一木けい(著) 新潮社 2018年
 面白いです。読後感も爽やかですね。
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『騎士団長殺し-第1部 顕れるイデア編-』
『騎士団長殺し-第2部 遷ろうメタファー編-』

村上春樹(著) 新潮社 2017年
 今年(2018)は、ノーベル文学賞の選考それ自体がなくなりました。その意味では、例年のような村上春樹の同賞の受賞予想はないでしょうが、それでも、(本作品を)(賛否両論の書評であふれていますが)一読してほしいと思います。
 原則、電車で通勤していますが、(同じく、電車通学の人には)その時間、有効に使ってほしいと思います。音楽を聴くとか、ゼミ発表のレジュメを読み込むとか、いろいろあると思いますが、今回は、その「王道」ということで、読書の薦めです。上記のように2作品、ご紹介いたします。いずれも広い意味での「恋愛小説」です。
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