学生に薦める本 2018年版

小片 章子(情報センター課)

『屋根をかける人』

門井慶喜(著) KADOKAWA 2016年

『負けんとき:ヴォーリズ満喜子の種まく日々(上・下)』

玉岡かおる(著) 新潮社 2014年
 ヴォーリズ(William Merrell Vories,1880~1964)は、アメリカから1905年に来日し、1941年に日本に帰化した。建築家として日本で多くの西洋建築を手懸けたが、同時に実業家でもあり、近江兄弟社の前身「ヴォーリズ合名会社」の創立者の一人としてメンソレータム(現メンターム)を広く日本に普及させた。また、キリスト教徒としてプロテスタントの伝道に貢献した多彩な人生であった。
 私にとって、ヴォーリズは縁が深い建築家である。私と私の母と私の義姉は、それぞれ東京、西宮、長崎でヴォーリズが設計した校舎で学んだ。また、兄の次女もヴォーリズの設計した東京のホテルで結婚の祝宴を開いた。
 ヴォーリズは「校舎が人を育てる」という名言を残した。彼の建物は、外見はシンプルであるが、居住性というか、居心地がかなり良いそうである。
 内田樹氏は母の出身校の名誉教授であるが、ヴォーリズの設計した建物で教員生活を過ごした。「ヴォーリズの建物は造形的にはそれほど美しいものではない。彼の真価はその中で暮さないとわからない。」、「建築は美術品ではない。そこに暮す人たちを久しきにわたって守り、励まし、癒すものでなければならない。」と「屋根をかける人」の書評に書いている。(本の旅人2017年1月号 掲載)
 「屋根をかける人」は、ヴォーリズの伝記小説であり、「負けんとき」は、ヴォーリズ夫人であるヴォーリズ満喜子さんの伝記小説である。満喜子さんは、明治期にアメリカに留学した強い女性である。
 ヴォーリズの建築した建物は、学校、教会、個人宅と北海道から九州まで広く点在しているので、建築見学ツァーをやってみたいと思っている。
 本学の校舎について改めて眺めると、校門から見た学生会館は、結構良い佇まいであると個人的には思う。歴史が刻まれると、さらに良くなることを望む。
[OPAC]
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