学生に薦める本 2015年版

安藤 潤

『左手一本のシュート』

島沢優子著 小学館 2011.5(小学館文庫)
 バスケットボールに限界生産力逓減の法則が適用できるかどうかはわからないが、小さい頃練習すればできなかったことがあっという間にできるようになっていたものが、年を重ねるごとにだんだんそう簡単には成果に現れなくなることはバスケットボールにもよくあることだ。しかしそのわずかな成果のためにどれだけの努力を惜しまないかは大切だと思う。バスケットボールをやっているかどうか、スポーツが好きかどうかに関係なく読んでもらいたい1冊。
 もう1冊の推薦図書を読むと心が痛み暗い気持ちになるが、こちらはその逆。こういう本を読んでしまうとまたバスケットボールが好きになってしまう。そんなこともあってつい今年もスポーツ大会で学生に交じってバスケットボールをやってしまった。学生時代の先輩や同期のアキレス腱断裂話を聞かされるとさすがにビビってしまうが、たぶんまだやめられないと思う。
[OPAC]

『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 : そして少年は死ぬことに決めた』

島沢優子著 朝日新聞出版 2014.12
 バスケットボールに多少なりとも関わる人間として心が痛む事件だった。おそらく表に出ない同様の体罰は今もあるに違いない。
 私がバスケットボールを始めたのは中学生になってからで、「バスケ王国・新潟」の人たちからすれば遅いデビューになると思う。しかも顧問は準硬式野球出身の新任の先生。先生も指導など苦労されたと思うが、何事においても自主性を重んじる校風だったこともあり、基本的にキャプテンが練習メニューを考えながらやるしかなかった。大会での成績も市内のブロック大会で準優勝するくらいで大きな大会ではそれほどの結果も出せなかった。
 高校に入ってからは部活はやめた。部活などしていられるような成績ではなかったからだ。大学に入って同好会でバスケットボールを再開したものの、5年間のブランクは大きく、周りは高校時代に国体選抜メンバーなどかなりのレベルの人ばかり。同好会だから何も教えられず、昔の職人や芸人のように横で見て覚えるしかなかった。
 その後、だらだら学生生活を続けたこともありOBチームで試合に出してもらったりしたが結局バスケットボールはよくわからないままだった。当たり前と言えば当たり前で、考えてみたら誰からもまともに指導を受けたことがなかったのだから。ただ幸いなことに指導を受けなかったおかげで体罰も経験することはなかった。
 中学時代のキャプテンはその後当時の日本リーグでも活躍し、現在は大阪のある高校でバスケットボール部の顧問を務め、全国大会にも出たりしている。時代が違うとはいえ、自主性に任せられたチームからもそのような選手、指導者が出たことはたしかだ。体罰ありのハードな練習をしても日本代表は残念ながらオリンピックからは遠ざかっている。学校教育の現場でのスポーツを再考する時期にきているのではないか。これを読んだ学生はどう思うだろうか。
[OPAC]