学生に薦める本 2015年版

星野 元(理事長)

『君は仏 私も仏』

堀澤祖門著 東洋経済新報社 2002.8
堀澤祖門大僧正のことは、平成26年度の卒業式の祝辞で紹介した。「再誕」。師は小千谷高校(旧制小千谷中学)から新潟高校(旧制)に進み、寮長からこの「再誕」という言葉を投げかけられ衝撃を受ける。
祖門師は京大に進学するが、この「再誕」という言葉が頭から離れず、一学期だけで退学して、比叡山に入り修行僧となる。そして戦後初めて「十二年籠山行」を成し遂げた。
「十二年籠山行」は、天台宗の開祖最澄を安置した山中の「浄土院」に詰め「結界」という区域から一歩も外に出ることなく、十二年も修行に明け暮れる。比叡の峰々を駆け巡る「千日回峰」と並ぶ荒行である。
祖門師は「再誕とは自分とはなにか、と問い、他に依存する生き方を捨てること」と語っている。「あとがき」にも少し書かれている。
祖門師は平成25年、京都大原の「三千院」の門主になられた。この本は、かなり前の比叡山泰門庵住職をお務めの時の出版。やや難しいが「しっかりせんかい日本人」と、厳しく私たちに問いかける。
[OPAC]

『新聞が衰退するとき』

黒田清著 文芸春秋 1987.8
多メディア化、少子高齢化、学生ら若者の活字離れ等々を背景に、新聞の購読部数が減少の一途をたどっている。
つい最近までわが国の日刊紙発行部数は、ざっと5,200万部(1,000人当たり432部)といわれた。それが2013年度で4,700万部まで減ってしまい、なお低迷を続けている。
しかし、この本はそういう意味で新聞に「衰退」という言葉を冠しているのではない。
すでに鬼籍に入って久しい黒田清さんは、読売新聞大阪本社の社会部長として活躍され、地方記者の私にとって"雲の上"に仰ぎ見る存在だった。新聞記者なら、みんな<br />"あこがれの的"だったのかも知れない。
泣く子も黙る「黒田軍団」の彼ら社会部は三菱銀行人質事件や茂樹ちゃん誘拐事件など大事件にめっぽう強く、「誘拐報道」「捜索報道」「武器輸出」など単行本も相次いで出版、ノンフィクションの新分野を開拓した。
その「黒田軍団」がなぜ消え、なぜ新聞が危機に陥ったか―。
[OPAC]

『20世紀にいがた100シーン』新潟日報社編 上巻/下巻

新潟日報事業社 1999.10-2000.8
21世紀を迎える時、「戦争の世紀」との決別が、世界中で声高に叫ばれた。しかし―。
振り返れば前世紀は、人類が思い描いた「夢」が次々に実現し、高度な文明と"幸せ"を手にした。そして同時に争いを繰り返し、破壊を進めた世紀でもあった。失ったものの大きさは計り知れない。
本書は、こうした百年の体験と教訓を記憶にとどめ、21世紀の礎を固める手がかりを得ようと、新潟日報社の編集局が総力をあげ1998年6月から週1回、紙面に連載した企画をまとめたものである。
具体的には「新潟県の百年」に的を絞り、これを百のシーンで切り取る形で、気鋭の記者たちが取り組んだ激動の世紀の長い「旅」である。
学生諸君がこの豊かな山河の故郷新潟を愛し、人生の舞台をこの新潟の地と定めるならば、是非とも改めて記者たちと「旅」をしてほしい書と思う。
[OPAC]