学生に薦める本 2015年版

神長 英輔

『驚くべき日本語』

ロジャー・パルバース著 集英社インターナショナル 2014.1
「国際学部で英語を学び、将来は国際社会で活躍したい」。結構だ。しかし、その前にやることがある。あなたが日本語でものを考えているとしたら、その日本語力で十分なのか。あなたは言語についてどれだけのことを知っているのか。楽しい語学の道連れにこの一冊。
[OPAC]

『脳内汚染からの脱出』

岡田尊司著 文藝春秋 2007.5(文春新書)
ゲームやネットの依存性は覚醒剤に匹敵する。スマホに一切触らない日を自分で作れなければ、その人は依存症である。依存症は脳機能を確実に破壊し、回復は困難だという。
あなたは大丈夫ですか。
[OPAC]

『チェゲムのサンドロおじさん』

ファジリ・イスカンデル著 国書刊行会 2002.1(文学の冒険)
舞台はカフカスのアブハジア。憎めない主人公のサンドロは行く先々で騒動を巻き起こす。物語の中にはソ連指導部の面々も登場する。民族間の軋轢が絶えない地域の過酷な時代をここまで可笑しく描き出してしまうのは文学の力である。
[OPAC]

『図書館を使い倒す! : ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」』

千野信浩著 新潮社 2005.10
私は大きな図書館の隣に住みたい。いや、図書館に住みたい。図書館のおかげで私は退屈を知らない。図書館で得られる知は品質が保証されている。図書館が知の拠点であることは今後も当分変わらない。
[OPAC]

『街場の戦争論』

内田樹著 ミシマ社 2014.10
内田樹の本が好きだ。読むたびに賢くなったかのような気がする。政府の専横を黙認し続けて戦争に至るなら国民は被害者ではなく共犯者である。今の日本社会に息苦しさを覚えるならこの本を読んでどうすべきかを考えよう。
[OPAC]

『アルグン川の右岸』

遅子建著 白水社 2014.4
アムール川(黒龍江)のほとりに暮らす先住民エヴェンキ。老女の回想という形で長い長い物語が語られる。優れた文学は歴史研究を圧倒し、言語の壁も民族の壁もジェンダーの壁も軽々と越える。
[OPAC]

『好きなことだけやればいい』

中村修二著 バジリコ 2002.4
ご存じ青色LEDの開発者であり、ノーベル賞受賞者である。少し前の本だが、「他人にどう思われようと自分を貫いて研究せよ」という勇気の言葉は今も私をとらえてはなさない。文系の学問、ことに歴史学に対する理解の無さはこの際、脇に置いておこう。
[OPAC]

『ソヴィエト文明の基礎』

アンドレイ・シニャフスキイ著 みすず書房 2013.12
ソ連とは何か。一つの答えがここにある。極めつけの洞察力で同時代人がソ連を読み解いた一冊。自分が生きる時代の自分の国を語るのは難しい。なのに、これほど深いことをこれほど平易な表現で語ってしまうとはさすが文学の国ロシア。おそるべし。
[OPAC]

『モンゴルの歴史』

宮脇淳子著 刀水書房 2002.9
現在のモンゴル国はユーラシアの大国たるロシアと中国に挟まれた小国だ。しかし、数千年単位で歴史を見るならば、モンゴル世界こそがロシアと中国を支配して大きな影響を与えてきた。ロシア史と中国史を語るならモンゴル史の学びは欠かせない。
[OPAC]