学生に薦める本 2020年版

藤本 直生

『フジモト先生のビューティフル★アメリカ~Some Stories in Missouri~』

藤本直生 銀河書房 1995年

 この本は今から約20年以上前、私が長野県の中学校に勤めていた時に教え子のために書いた本です。本校の派遣留学先である University of Central Missouri は、アメリカの中西部ミズーリ州にありますが、そこは長野県と姉妹州でもあります。そのような関係で、私は1992年の夏に派遣団の一員として3週間ほど、ミズーリ州でホームステイする機会に恵まれました。本書は、私にとって初めて海外で体験した楽しいことや大変だったことを赤裸々に書きました。これからアメリカへの派遣留学を考えている人にお薦めの1冊です。
[OPAC]

『世界とびある記』

兼高かおる ビジネス社 2019年
 昨年、2019年1月にテレビのニュースで、兼高かおるさんが90歳でお亡くなりになったと知りました。子供の頃、日曜日の午前に【兼高かおる世界の旅】をテレビで楽しみに見ていました。海外を旅行することや、外国の人々と英語を自在に使ってコミュニケーションする兼高さんの姿を見て、私も「世界で活躍できる人になりたいなあ。」と思っていました。
 この本は、今から60年前の兼高さんが20代の頃に書かれたものです。アメリカの大学での学生生活や、仕事で台湾、フィリピン、香港など東南アジアの国々を旅した経験が、若い感性と好奇心に満ち溢れたタッチで、生き生きと描かれています。
 兼高さんがお亡くなりになったことは残念ではありますが、90歳まで生きて日本の多くの(元)少女たちに夢を与えたということは、素晴らしい功績だったと思います。40年前に【兼高かおる世界の旅】を見て育った私は、研究者となった今、海外の様々な国々で開催される学会で、まがりなりにも英語を使って研究発表ができるようになりました。皆さんもぜひ兼高さんの本を読んで、まだ見ぬ世界を旅してみて下さい。
[OPAC]

『低欲望社会 「大志なき時代」の新・国富論』

大前研一 小学館 2015年
 著者の大前さんは客観的なデータに基づいて、現代の日本社会における問題点を指摘し、今後どのようにしたら競争の激しい国際社会で日本が生き残っていかれるかを述べています。【低欲望社会】というタイトルが示す通り、最近の日本経済の低迷は、人々が車や家などを購入しないなどの欲望がなくなってきていることが原因だといいます。
 また、結婚するカップルが少なくなっていることから、少子化が進みそれも経済の低迷に拍車を駆けています。そこで、大前さんは日本の結婚制度を抜本的に見直すべきだとも述べています。出生率の高いフランスやイギリスでは、生まれる子供の約半数は婚外子だそうです。イギリス人の男性と結婚した私には、イギリスに3人の姪がいますが、そのうちの2人は10代でシングルマザーとなりました。しかし、ワーキングプワーに陥ることもなく、子育てと仕事を両立させています。それは、イギリス政府が若いシングルマザーを金銭的に援助して、子育てのしやすい環境を提供しているからです。日本では近年できちゃった結婚が約半数になっているにも関わらず、長い間相続など法律で婚外子を差別して来ました。そうした中で、多くの女性たちが人工中絶をしているのも事実です。一方、イギリスでは40年ほど前に法律上での婚外子の差別を撤廃しました。このようにすべての子供を社会の一員として認め、社会全体でサポートして行く体制を整えることが少子高齢化に歯止めをかけることにもつながると思います。
[OPAC]

『右ハンドル』

ワシーリイ・アフチェンコ 群像社 2018年
 著者のアフチェンコさんは、本校のロシア語コースの皆さんが派遣留学で勉強する、極東のウラジオストクで育ちました。そこでは、1970年代から中古の日本車が陸揚げされるようになりました。そして、道路事情の悪いロシア極東でわりと安価で性能のいい日本車は、地元の人たちに「日本娘(ヤポンカ)」と呼ばれて愛されました。アフチェンコさんも日本車を自分の恋人のように大事に手入れして乗って来ました。それは、日本人の私たちが想像を絶するほどの可愛がりようで、読んでいて思わず引いてしまうくらいです。しかし、ロシアはアメリカやヨーロッパ諸国と同じ左ハンドルが主流の国です。中央政府は右ハンドルに対する弾圧を強め、ついに日本車の輸入ができなくなってしまいました。新潟では、今まで多くの中古車をロシアに輸出して来ました。日本車がロシアでの第2の人生をどのように過ごしたか知りたい人は、ぜひこの本を読んでみて下さい。
[OPAC]

『お金は銀行に預けるな-金融リテラシーの基本と実践』

勝間和代 光文社新書 2007年
 「お金は銀行に預けるな」という、ショッキングなタイトルのこの本を手にした時、いったいどういう本なんだろうとおっかなびっくり読んでみました。
 著者の勝間和代さんは経済評論家という金融のプロですが、素人の私たちにも分かりやすく、金融についての知識が身に付くように書かれています。例えば、日本人の個人資産は世界でもかなり多いのですが、残念なことに金融の知識がないゆえに、その多くが銀行や郵便局に貯金として預けて「寝かせたまま」になっています。私たちは、お金を銀行に預けておけば安心と思っていますが、勝間さんによるとそれは人生設計上のリスクになるとのことです。なぜならば、「お金に働いてもらう」ということを知らないでいるために、本来ならば得られるべき収入を放棄しているのだそうです。勝間さんは、金融の知識を上手に活用し、働いて得られる労働収入に加えて、投資信託など金融からの収入も得られるようにして、ワークライフバランスを整えた生活ができるようにすることを薦めています。私も数年前から勝間さんお薦めの資産管理を始めてみました。
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『Memoirs of a Geisha』

Arthur Golden Pearson 2008年
 今から20年以上前の1999年にイギリスへ留学した時、ベストセラーとなっていた本が日本人女性をモデルとして書かれた、Memoirs of a Geishaでした。当時、この本がどこでも話題となっていたので、私もぜひ読んでみようと思って書店で買いました。しかし、原書は400ページもある分厚い本だったため、最初の数ページをがんばって読んではみたものの、最後まで読み終えることが出来ませんでした。こちらに紹介するPearson English Readers版は、原書を簡単な英語で書き直して100ページほどの長さに短縮していますので、読みやすく最後まで読むことが出来ました。2006年には、この本がハリウッドでSAYURI というタイトルで映画になりましたので、よかったらこちらもご覧下さい。
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『SAYURI』(DVD)

ロブ・マーシャル(監督 ボニーキャニオン 2006年
 映画SAYURIは、アーサー・ゴールデンの小説 Memoirs of a Geisha がもとになっています。主役のさゆりは中国人のチャン・ツィイー、お姉さんのような彼女のメンター役、豆葉(まめは)を演じたのは中国系マレーシア人のミシェール・ヨーです。おカボと呼ばれていたさゆりの親友は工藤夕貴さんが演じていましたが、ハリウッドの映画ということで、キャスティングが国際的なのに驚きました。ちなみに、血はつながっていませんが「おかあさん」と呼ばれる置屋の女将(おかみ)役は、桃井かおりさんでした。何年も前にテレビで桃井さんが、「日本人はアメリカでは若く見られがちだから、普通にしていたら私も芸者と間違われちゃうのよね。意地悪なおかあさんの役作りに苦労したわ。」と、豪快に笑いながら話していたのが印象的でした。小説と映画を比べながら観たら、面白いと思います。
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『ハウルの動く城』(DVD)

宮崎駿(監督) ウォルト・ディズニー・ジャパン 2014年
 2014年に本校に赴任して初めて受け持った4年ゼミの学生が、【ハウルの動く城】を卒業論文のテーマに選んで、主人公のソフィーとハウルの会話を分析しました。学生の書く卒論を読み指導しながら、このアニメに興味を持つようになりました。この映画はイギリスの児童文学、 Howl’s Moving Castle がもととなっています。よかったら、英語で書かれた原書も手に取って読んでみて下さい。
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『Howl's Moving Castle』

Diana Wynne Jones HarperCollins Children’s Books 2010年
 この本は、前任校の新潟県立大学のセルフ・アクセス・センターで見かけて、興味を持ちました。アニメの【ハウルの動く城】は、この本がもとになって作られました。映画は観たことがある人は、本も楽しみながら読むことができると思います。本にも挿絵がありますが、アニメとだいぶ違ところもおもしろいですよ。例えば、ハウルにこき使われているカルシファーという炎の悪魔は、本の挿絵では空恐ろしい顔をしていますが、映画だとかわいらしい小悪魔のように描かれています。
 本の後半には、著者のジョーンズさんとのインタビューが載せられていますが、ジブリ映画の製作者たちと会った時のことも飾らない言葉で語っているのが印象的でした。自身の作品が素晴らしいアニメになったと賞賛していますが、子供時代に戦争を経験した同年代の宮崎駿監督が戦闘シーンを好んで取り入れているのに対して、ジョーンズさんはそうしなかったことも、正直に自分の意見として述べていました。
 Graded Readers にもの足りなくなった人は、ぜひこのような Teenage Novels にも挑戦して見て下さい。
[OPAC]

『TOEIC L&Rテスト直前の技術』

ロバート・ヒルキ、相澤俊幸、ヒロ前田 アルク 2018年
 数年前にTOEIC で満点(990点)を取った、本校非常勤講師の先生に薦められてこの問題集で勉強し、TOEIC を受験したら、何と100点近くアップし驚きました!TOEIC で点数を上げたい人に、一押しの問題集です。
[OPAC]