学生に薦める本 2020年版

石川 洋

『四千万歩の男』(一)~(五)

井上ひさし 講談社文庫 1992~1993年
1800年から1816年の間に,日本中を歩き回って当時の技術を考えればきわめて正確な実測の日本地図を作成した伊能忠敬の歴史小説です.日本の歴史,地理,天体に興味があれば(なくても?),脚本家でもある著者の筆致とともにぐいぐい物語に引き込まれてしまいます.

約200年前の50歳と言えばどこに出しても恥ずかしくない立派なご老人だと思いますが,忠敬はその50歳から勉強を始め,56歳から72歳まで日本中を歩き回り,日本地図を作成(前年ながら完成の1年前に亡くなってしまいます)させたのは偉業としか言いようがありません.

人生100年といわれる昨今です.今後の人生設計を考える上でなにかヒントが得られるかもしれません.

千葉県香取市には伊能忠敬記念館があります.興味があればそちらにも出掛けてみてはいかがでしょうか.
[OPAC]

『四千万歩の男 忠敬の生き方』

井上ひさし 角川書店 2003年
四千万歩の男(一)~(五)が刊行されてから10年後に出版された本です.文庫本をいきなり5冊読むのは無理,小説が書かれた背景や登場人物の概略を知りたい,という人にはまずこの本を読んでみてはいかがでしょうか.対談形式の「歩く理論」と「『四千万歩の男』の読み方作り方」は読後に読まれた方が面白いかもしれません.
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