学生に薦める本 2020年版

小片 章子(情報センター課)

今年は、世界中が新型コロナウイルスという見えない敵を相手に格闘する年となり、学生の皆さんは、遠隔授業という新しいスタイルの授業で前期を過ごすことになりました。
皆さんがキャンパスに、図書館に戻って来れる日が早く来ることを祈っています。

さて、図書館では、新しい取り組みとして「コミックコーナー」の新設を計画しています。「コミックコーナー」の選書は、昨年末に皆さんにご協力いただいたアンケートの結果と、数種類の参考資料をもとに教職員で組織する「情報センター運営委員会」で行い、ようやく購入リストを決定しました。近くご案内します。良いセレクションだと思っていただけると嬉しいです。

個人的には、中学生くらいまではマンガを日常的に読んでいた記憶がありますが、それ以降は新聞や雑誌の4コママンガくらいで、ストーリーのあるマンガとは長い間無縁で過ごしてきました。それでもマンガの持つ力は日々痛感しており、表現媒体の一つであるだけでなく、有力な輸出コンテンツであり、図書館においては、活字への入り口だと認識しています。
世界的には、ルーヴル美術館がマンガを「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学」「演劇」「映画」「メディア芸術」に次ぐ第9の芸術として認定し、「ルーヴルNo.9」と称して「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」という展覧会を世界中で巡回しました。
2018年末のパリでの「MANGA⇔TOKYO」展、2019年夏の大英博物館での「マンガ展」など、日本のマンガをテーマにした展覧会が多く開催されました。マンガはもはやサブカルチャーではなく、カルチャーです。

選書のために読んだマンガのうち、特に印象に残った以下の作品をお薦めします。

『さよならミニスカート』

牧野あおい著 集英社 2018年11月~
「このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。」というキャッチコピーは秀逸です。
内容は、学校でひとりだけスカートをはかない女子高生の主人公と、彼女を取り巻く人々の再生と成長の物語。
宝島社刊「このマンガがすごい(オンナ版)」2020年版第1位になった作品で、エポックメイキングになる可能性を秘めた作品です。
現在、連載が中断しており、未完の状態であるのは残念ですが、一度手に取ってみてください。
[OPAC]

『ワンダンス = WONDANCE』

珈琲著 講談社 2019年5月~
吃音症の男子高校生が、人目を気にせずダンスに没頭する女子高生に惹かれて一緒に踊るためにダンスに挑む物語です。
苦手なことを乗り越えようとするのではなく、受け入れて共存することにより結果的には乗り越えられるかも知れません。
自分を表現する方法は幾通りもあり、世界への入り口は何処にでもある、という気持ちにさせられます。
連載中の作品で今後の展開が楽しみですが、とりあえず3巻までお楽しみください。
[OPAC]

『しまなみ誰そ彼』(全4巻)

鎌谷悠希著 小学館 2015年12月~2018年7月
空き家再生プロジェクトに取り組むLGBTQの人々の物語で、舞台は、広島県の尾道です。
「誰か僕に、ただ生きていくだけの強さを。」という帯のコピーはすべての人々に共通する願いです。
時には善意が悪意よりも人を傷つけるということ、理解できてもできなくても供に生きていかなくてはならない、ということを改めて感じました。
というと、重苦しい物語のように感じるかも知れませんが、高校生の青春物語でもあり、尾道に聖地巡礼したくなるような爽やかな読後感です。
[OPAC]

『セトウツミ』(全8巻)

此元和津也著 秋田書店 2015年12月~2018年7月
関西の男子高校生の瀬戸と内海が放課後に川辺でダラダラと繰り広げる会話劇です。
キャッチコピーは「この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか」。
関西弁の会話が8巻分ダラダラと続くのですが、会話の影に家庭の悩みや社会問題などが見え隠れして、綿密に計算された作品で、最終巻にはちょっとした伏線回収もあります。
セトウツミという漫才コンビのようなタイトルも気に入っています。
個人的に好きなシーンは、イヤホンで音楽を聴いている内海に「何聴いてるん?」と尋ねると、内海が「プロコル・ハルム」と答えるシーンです。プロコル・ハルム(=Procol Harum)は、1960年代後半に活躍した イギリスのバンドで、内海の性格を表している渋い選曲です。
ダラダラしたい気分の時に、試しにご一読ください。
[OPAC]